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第一章 井戸の底には人魚が眠る
駅から続くショッピングセンターは、今日も賑わっていて、買い物をする人の群れで一杯になっていた。その雑踏を抜け、一休みするかのように、何人かが美術館へと訪れる。
美術館はKUROHUNEと名付けられているビルの二階にあり、ショッピングセンターと通路で繋がっていた。そして二階には他に、金太楼という喫茶店もあった。
「八起ちゃん、こっちにランチとコーヒーね。それと食パン一斤、持ち帰りね」
「はい!かしこまりました!ランチとコーヒーですね」
静けさが取柄のような喫茶店の筈なのだが、昼に時間になると、定食屋に変貌してしまう。店には常連が多く来ていて、殆どが上の階で働く会社員達であった。
「八起ちゃん、ランチ二つとコーヒーをポットで持ち帰り。それと、サンドイッチを五人前、三時に取り来るね」
「かしこまりました、繰り返しますランチ二つ、コーヒーポットで持ち帰り、三時にサンドイッチ五人前」
この繰り返しは、地下で待機しているシャフ寿村に向けて発信している。寿村は俺の声を聞き、料理をしているのだ。金太楼にはスペースの関係もあり、キッチンがない。
「八起ちゃん、こっちに弁当を五個、それとランチ二つ」
「かしこまりました!繰り返します……」
昼の時間は声が枯れそうになる。叫ばなくても、マイクで音声を拾って地下に流してくれるのだが、どうしても声が大きくなってしまう。
「八起ちゃん!」
「はい!」
俺、遊佐 八起は、この喫茶店、金太楼でバイトをしている。
「八起ちゃん!パンの会計をお願い」
「はい!今行きます!」
金太楼はパン屋銀のきつねと連携していて、パンも売っている。他に地下にある、レストラン&バー、黒船と同じ経営になっているので、レストランメニューも注文できる。
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