ある少女の詩

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ある少女の詩

出会いと別れを繰り返すことは、幼い頃父から教えられて知った。 誰もがいつかは死に、永遠の別れを迎えることも。 幼い私はまだ誰とも別れたことはなかったのだが、別れの哀しみを想像して泣いたのをよく覚えている。 年を重ねるにつれて知る人の数が増え、離れていく人の数も増えた。 どこからか来た人、どこか遠くに行った人。 生まれてきた人、死んだ人。 一度巡り会った人のことは忘れない。それは私の命が朽ち果てるまで。 人生を送る過程の中で辛い言葉を浴びせられたり、離れられてしまったり、人が恐ろしくなって愛することにすっかり怯えてしまった。 もう、人は信用しない、愛さないだろうという諦めも確かにあった。 けれどあの人に出会ってしまった。10以上離れている人で大切な家庭を持っている。 あの人にとって私はただの部下であり年下の女、もしくは少女のように思われているのだろう。 とても優しく人の悲劇を自分のことのように苦しみ、決して笑顔の絶やすことがない素敵な人。どんどんどんどん惹かれてく。私もあんな風になりたいと。 優しさに触れてしまってはもう手遅れ。やがて憧れは恋心に変わる。絶対に叶わない恋。 もし私が10年早く生まれていたら、もしあの人が10年遅く生まれていたら、もっと早くに出会っていたら、もしかしたら、世界で1番大切な存在となって隣にいたのかもしれない。そう思うと悔やんでも悔やみきれず涙を堪えきれない。 せめて私の中にある少女の心、あの人に対する憧れは、そっと秘めておこうと思う。 いつか永遠の別れの日が来るその時まで。
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