2人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
ある少女の詩
出会いと別れを繰り返すことは、幼い頃父から教えられて知った。
誰もがいつかは死に、永遠の別れを迎えることも。
幼い私はまだ誰とも別れたことはなかったのだが、別れの哀しみを想像して泣いたのをよく覚えている。
年を重ねるにつれて知る人の数が増え、離れていく人の数も増えた。
どこからか来た人、どこか遠くに行った人。
生まれてきた人、死んだ人。
一度巡り会った人のことは忘れない。それは私の命が朽ち果てるまで。
人生を送る過程の中で辛い言葉を浴びせられたり、離れられてしまったり、人が恐ろしくなって愛することにすっかり怯えてしまった。
もう、人は信用しない、愛さないだろうという諦めも確かにあった。
けれどあの人に出会ってしまった。10以上離れている人で大切な家庭を持っている。
あの人にとって私はただの部下であり年下の女、もしくは少女のように思われているのだろう。
とても優しく人の悲劇を自分のことのように苦しみ、決して笑顔の絶やすことがない素敵な人。どんどんどんどん惹かれてく。私もあんな風になりたいと。
優しさに触れてしまってはもう手遅れ。やがて憧れは恋心に変わる。絶対に叶わない恋。
もし私が10年早く生まれていたら、もしあの人が10年遅く生まれていたら、もっと早くに出会っていたら、もしかしたら、世界で1番大切な存在となって隣にいたのかもしれない。そう思うと悔やんでも悔やみきれず涙を堪えきれない。
せめて私の中にある少女の心、あの人に対する憧れは、そっと秘めておこうと思う。
いつか永遠の別れの日が来るその時まで。
最初のコメントを投稿しよう!