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「フルーレ様ッ!!!」
とても焦った様子で魔王直属の配下〈魔刻12針〉の一人、紅金のマヴェリアが声を荒げる。
「今度は何...?」
これまでずっと優勢であったはずの魔王軍は少しずつ追い詰められていた。
その原因に配下一人一人の強さやその力が何故か勇者を名乗る一行に知られていることや、勇者達の持つ予想外の力量が挙げられる。
そして今この一瞬も勇者達は少しずつ迫っているのだ。
「非常に申し上げ辛いのですが......四天魔の一人...雷轟のルカスと十二針の滅刹のディエルと凍晶のレミスとその配下が勇者ロイトに単独でやられてしまいました……」
その場には更に重い空気が流れ込む。
フルーレはこれまでにないほどの大きな焦りを感じていた。
この報告が本当であれば魔王の配下の中で両手で数えられる程の配下が2人もたった1人の人間にやられたということになる
その中でもルカスにはフルーレ個人でも数え切れないほどの恩があり、ルカスがいなければフルーレは魔王にはなっていなかった。
更にルカスは基本的な強さで言えばフルーレよりも強いのだ。
そのため、フルーレはもう既に負けをほとんど確信していた。
「何ィ……!?少し前まで勇者を倒すと抜かしておったあのルカスがやられたというのか!人間勇者たった一人ごときに?冗談はそこまでにしとくれ、奴はそこまで弱くない」
12針の一人、地鳴のベルガがそうつぶやく
「私もとても信じがたいのです......ですが…」
マヴェリアは仲間の死を重く考えているのか握った拳は震えている
それは恐れの感情というよりかは怒りの感情だというのは誰にでも理解できた
「そ、それは本当だと言うのか?!」
マヴェリアの気持ちの重さを感じたのかベルガは事実であるというのを確信したがまだ信じ切れてはいないようだ
「魔王様の目前でこの私が嘘を言うと思っているのですか......」
「……疑ってすまなぬな……儂としたことが……己……勇者共め……」
マヴェリアの発言からベルガはルカスとその仲間の死を確信し
ベルガの表情には強い怒りが露になってゆく
「その代わりと言っては失礼ですが……ルカスが勇者から重要な情報を掴みました……その内容は……」
マヴェリアは少し息を落ち着かせる
「「お前たちの仲間に裏切り者がいる」とのことで...」
その一言を聞いたフルーレは何かを決意したのか深く呼吸をした後言葉を発する
「はぁ……そんなことはもういいの、二人だけでもいいから早く逃げて。これ以上仲間が死ぬのはもう耐えられない……これは命令...そして最後のお願い。アイシスを呼んできて...勇者達はもうすぐにここまで来るから」
フルーレはマヴェリアを差し止めた後少し寂しそうにそういった。
「それは出来ません……私は命の果てるその刻まで…貴方と共に戦います」
「あなたならそう言うと思っていたわ...でも、一つ作戦があるの」
「そういって自己を犠牲にしてこの戦いを終わらせるおつもりでしょう?それに貴方はいつもそうだ、私達は部下なのにその部下である私達に甘すぎる……!」
「そうね...そうかもしれないわ……だけど二人にお願いがあるの……だから…黙って聞いて」
「はぁ……」「ほう?」
少し遅れ気味に二人が口をそろえて言葉を発した
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