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「卒業おめでとう」
イケメンお兄さん改め、軍曹殿と私は握手をかわした。
「ありがとうございます」
「君の班、最優秀だったらしいな。その調子で、本配属後も頑張ってくれよ」
「はい!」
高校卒業後、私は騎士団の訓練学校に入った。
思った通り、騎士団の体育会系風土は私の性に合っていた。入学後のオリエンテーションで班長の一人に指名されたので、部活での経験を活かして仕切り始めたところ、班の成績が最優秀となり半年後の卒業式で表彰された。
「君の家族、校門前に迎えに来ていたぞ」
「本当ですか!」
「ああ。早く顔を見せてやりな」
抱えた荷物を取り落としそうになりながら、足早に校門に向かう。
「母さん! と、アガガ?」
そこには、笑顔の母さんと、お座り姿勢のアガガがいた。アガガはこの半年でさらに大きくなったように見える。しかもオレンジ色の角が生え始めていた。
「お帰り、卒業おめでとう!」
母さんに抱きつかれながら、「ありがとう」より先に疑問が口をついて出た。
「母さん、アガガに乗ってきたの?」
「うん。最近よく乗せてもらうんだ。買い物のときとか、助かっちゃって」
見れば、鞍が二人乗り用になっている。乗り具も色々変わっていた。母さんは相変わらずおっとりした口調で言った。
「散歩やエサやりも私がメインでやるようになったの。案外、できるものね」
「ガガ!」
アガガが賛同するように鳴き、母さんと顔を見合わせた。……なんだか、アガガの態度が優しくなった気がする。私になついていたときは猛々しい感じだったのに、母さんと一緒にいるアガガはお姫様を守る聖獣、みたいな。
「……母さんに鞍替えしたな、こいつ」
「何言ってるの。アガガもあなたのお迎えに行きたがってたから、連れてきたのよ」
母さんがさっさと前方の鞍に腰かける。私はもはやどっちに嫉妬すればいいのかわからないまま、妙にくすぐったい気分で後ろの鞍にまたがった。
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