序章 ブラキナファソと野球の出会い

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序章 ブラキナファソと野球の出会い

「おーい、そこの少年たち!一緒に野球してみない!?」  太陽がカンカンに照りつけるとあるブラキナファソの町。そこにいる少年たちに対して、いつも見かけない東洋人が野球道具一式を持って、勧誘していた。ほとんどの少年は無視して、水を取りに行ったが、四人の少年たちはその東洋人の方に向かった。 「その野球という玉遊びでお金を稼げるのか?」  最初の言葉はあいさつではなく、お金のことだった。その少年はどうしてそんなことを聞くかって? それはこの国が貧しいからである。国民の平均年収が6万であるこの国は児童が働くことも珍しいこともない。実際に、この四人の少年たちも例外ではない。東洋人はその事実を踏まえたうえで、胸を張りながら話した。 「その玉遊びを誰よりもうまくなると、ここにいる町の人を全員救えるぐらいのお金はもらえるようになるぞ!」 「それは本当か?」  少年は東洋人を疑っていた。世の中に、そんなうまい話があるわけがないと。東洋人はハンカチで顔を拭いてから、リュックからその年のプロ野球の選手名鑑を取り出した。そして、選手の給料や契約金のお金の額を見せながら説明すると、みるみるうちにその少年たちの目の色が変わってきた。 「おい、俺たちがこの玉遊びができるようになって、このプロ野球に入ったらこの生活から解放されるのか!?」 「せやで! ここから這い上がれるチャンスがあるで!」  少年たちは目をキラキラさせながら、東洋人が持っている野球道具一式を見た。 「俺はジャマール・ローズ。このちっこい友達がアキーム・ビグビー。そして、足の速いラシャド・モーガンに、ひときわでかいナシール・オースティンだ。あんたは?」 「わしか? わしは荒波雄洋や。この町に野球を教えに来た日本人や。よろしくな!」  ジャマールたちは雄洋を、整っていない道路を歩きながら近くの公園に連れて行くのであった。  そこから、ジャマールたちの貧困から抜け出す野球人生が始まるのであった。
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