憎悪の声

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◇◇◇  瀧本には同級生で幼馴染の永島奏太という親友がいた。彼は現在、東京の一流大学に通っている。  小さい頃から頭が良く、勉強が出来てスポーツも万能。正義感が強くて常にリーダーシップを取るタイプ。誰からも慕われていて、みんなが奏太のことを取り合っていた。  休み時間になると自然と彼の元に人は集まる。何をするにも奏太が輪の中心となって物事を進めるのが定番だった。  ただ家が近くだからという理由だけでいつも一緒にいられた瀧本。友だちとしては釣り合っていないくせに、そんな陰口を何度聞いたことか。  奏太は優しい。瀧本が悩んでいるのを知って、「お前は俺の親友なんだから、立場とか関係ないじゃん」と言ってくれた。  彼は瀧本にとって親友というよりも憧れの存在だ。奏太のようになりたい、奏太が進む道を自分も目指したい。  そう思って必死に勉強を頑張ったが、やはり奏太のような天才になれる訳もなく、高校は別々のところへ通うことになる。  瀧本は高校生になると、同い年の彼女が出来た。自分には勿体ないぐらいの美人で、当然のように奏太にも紹介をした。  そのまま三年間交際を続けたのだが、進学とともに彼らは別れることになった。  瀧本は地方の大学へ、彼女は上京して専門学校へと進む。  誰も知り合いがいない土地で一人暮らしを始めたのだが、寂しさは感じなかった。なぜなら、毎日のように奏太から連絡が来ていたから。  彼はいつも瀧本のことを心配してくれる。それが本当にありがたくて、何度励まされたことか。  次第に学校で友人も増え、忙しい日々を過ごすようになると、奏太からの連絡は減っていった。それは自然の流れで、何の疑問も持たなかったのだが、その年の夏に帰省して中学時代の友人と集まった時に瀧本は信じられないことを聞いた。 「奏太、彼女と一緒に住んでるらしいよ」  その場にいない奏太のことを酔いに任せて語る友人の言葉に驚き、瀧本は詳しく聞いてみた。すると、その彼女とは高校三年の時からずっと付き合っていたらしく、瀧本と同じ学校に通っていたことが分かった。  まさかと思い、写真を見せてもらうとそこに写っていたのは自分が付き合っていた彼女だった。
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