憎悪の声

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◇◇◇  小中さんはその日、休みだった。  その事実が余計に信憑性を高めた。   「……なあ瀧本、これで本当に終わりにしよう。小中さんに録音した声を聞かせて、何が起こっているのか明らかにして」  それは今まで見たことがないほど紺堂の真剣な眼差しであった。  瀧本も同じように考えている。これで終わりだ、と。  翌日の夕方、仕事が休みである二人はシフトを確認するという名目で店に行った。  小中さんは仕事終わり、休憩室で皆と談笑している。  紺堂が現れたことでその場は更に盛り上がり、おばちゃん達の嬌声が上がった。  ひと段落してそれぞれが帰宅していく。小中さんが一人で帰るタイミングで瀧本は一緒に外へ出た。 「小中さん、ちょっといいすか?」 「え? どうしたの?」  瀧本の母親と同じくらいの歳である小中さんは年相応の顔つきをしていて、誰に対しても優しい表情をする。昨日聞いたあの恐ろしい声と一致するとはとても思えなかった。 「……ミシマキョウコって誰ですか?」  そう尋ねると、彼女の顔は分かりやすいほど引き攣った。 「な、なに? 何の話?」  自転車に乗って帰ろうとする彼女を引き止めるように瀧本はスマホに記録された音声を再生させ、事の経緯を掻い摘んで説明した。 「これがなんなのか、聞きたいんです俺たちは」  瀧本の後ろにはいつの間にか休憩室から抜け出した紺堂の姿がある。 「お願いします。知りたいだけなんです」  紺堂は頭を下げた。それに続くように、瀧本も切望する。  泣きそうな顔でこちらを見る小中さんは、観念したのか二人を近くの公園へ案内した。  夕方の公園は溶けるような暑さで、汗がドッと滲んでくる。  屋根があるベンチに座ると心地良い風が顔に当たり、体を少しだけ涼しくさせてくれる。蝉の声が聞こえる中で、向かいの席に座った小中さんはハンカチで汗を拭いながら話し始めた。
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