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「キョウコは私の学生時代からの友人。ずっと私のことを下に見てて、馬鹿にしてくるような態度が許せなかった。本当に、死んでほしいっていつも思ってた」
鋭い目つきで語る彼女の話は、出だしから身構えてしまうような怖さがあった。
「避けられなかったのが辛かった。私の夫と彼女の旦那が偶然にも同じ会社に勤めてて。あっちが役職的には上なの。部署は違ったから直接的な関わりはなかったんだけど、それが分かってからは会う回数も増えていってね。卒業してからは一生会わないと思っていた相手だったから、絶望しかなかった」
「それで、あの声はどういう流れで?」
「あの女、殺したかったんだけど、もちろん捕まりたくもないじゃない? ずっと何かないかなって考えていたのよ」
彼女はさらりと恐ろしいことを言う。思わず聞き逃してしまいそうなほど自然な言葉だった。
「そしたら、SNSで呪術師と呼ばれる人と知り合いになってね。『呪いの声』っていうのを聞いたの。とある古びた神社の裏手にある井戸の中に向かって殺したい相手の顔を想像しながら名前を叫ぶと、本当に死ぬっていう呪い」
「いやいや、呪いって。そんなのただのオカルト話でしょ?」
「最初はそう思ってた。でも、実際にそれで死んだ人がいるって聞いて。行ってみたくなったのよその神社に。割と近くにあってね、車で三十分ぐらいのところにあった」
彼女は滔々と語っていく。詰まるようなところがないため、それが余計に事実のように思える。心の中で若干の疑いを持ちながら聞いていた瀧本であったが、彼女の目が真剣過ぎて信じる以外なかった。
「階段を登ったところにあったその古びた神社は昼間でもどんよりとしていて、すごく暗くて怖かったの。その裏手に回って林の中を進むと、ボロボロの井戸があった。中を覗き込むとドブの臭いがして吐きそうになったわ」
とてもリアリティのある内容で、頭の中でイメージしながら話を聞いていると思わず寒気を感じる。
「雨は? 夕立が来たんでしょ?」
「そう。呪術師の先生が言うには、激しい夕立がある時に雨音に紛れるようにその井戸の中に向かって叫べば、呪いが掛けられるからって教えられて」
「その時の声が、紺堂の部屋に聞こえたものだってこと?」
「たぶんそういうことなんだと思う。まさか紺堂くんの部屋に繋がってるとは思わなかったけど、先生が言ってたのは、霊道と呼ばれる霊が通るための通り道みたいなものが存在するみたい。呪いの声もそこを通って紺堂くんの部屋にたどり着いたのかもしれない」
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