憎悪の声

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「ウソだろ、マジかよ」  瀧本は隣に座る紺堂とともに言葉を失った。確かに、小中さんの話を聞くと筋妻は合う。あの憎悪の声たちは、呪いの声だった。だから相手の名前とおぞましい言葉を羅列していたのだ。  そして、声が反響していたのは井戸の中に向かって声を発していたからか。  ただ、ひとつ疑問に思うのは、なぜ夕立なのか? 雨に紛れるのならば、朝でも夜でもいいはず。  その疑問を解決するように、小中さんは続きを話した。 「夕立って、友を絶つ、っていう意味があるそうなの。友絶(ゆうだ)ち、つまり親しい友人との繋がりを絶つってこと。呪いによって、二度と会えないようにしたの」 「二度と会えないって……じゃ、じゃあ、その人は結局どうなったんですか?」  瀧本は恐る恐る彼女に尋ねる。  その時、強い風が辺りに吹き(すさ)び、彼女の髪の毛がバサバサとなびいた。  激しく揺れる前髪。そこから覗く悪魔のような目つき。そして、怪しく笑みを浮かべる口元。それらを見て瀧本と紺堂は全てを悟った。  ミシマキョウコはもうこの世にいないのだと。
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