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<3>
僕がこの国を訪れたのは、小雪がちらつく二月の初めだった。
今は11月初め、僕のアメリカでの留学の期限は一年ときまっている。
だから僕の在留資格はあと三か月。
帰国が近づいて来たある日、僕の前に訪れたハロルドは恐ろしく美しい白人の青年を連れていた。
身なりの整った、その余りに綺麗過ぎる青年は僕を見ると軽く微笑んで、人目も憚らずにハロルドの頬に軽くキスをした。
青年はハロルドの頬を撫でると、そのままハロルドと別れて行ってしまった。
「じゃあ、また」
そう告げたその青年の声はとても涼やかで、ふんわりと春の暖かい風が吹いた様だった。
ハロルドはその青年の去った方を、立ち竦んだままじっと見つめ続けていた。
悲しいとも、切ないとも言えない瞳でじっと。
・・・僕でも分かる。
ハロルドの想い人は、「彼」なのだと。
それも純粋な思いではなく、かなり複雑な想いを抱えているのだと。
ハロルドはその後も数分・・彼の去った方向をじっと見つめていたのだが、それにも飽きたのか僕の隣に無言で座り込んだ。
そして項垂れたまま一人小さく笑い、心配顔でじっと覗き込む僕に呟いた。
「ははっ、恰好悪いよな・・。ああ、今カイルの思ってる通りだよ。俺はアイツが未だに好きなんだ。やっぱりどうやっても忘れられない」
そう呟いたその顔は・・苦悩と悲哀に満ちていた。
僕はつい、ハロルドを強く抱きしめてしまった。
それと同時に僕の口から勝手に、とんでもない言葉が吐いて出た。
「・・・イイよ、僕を彼の代わりにしても。僕が君の想いを受け止めてあげるから」
(うわわわわ・・・・何言ってんだ自分)
心はそう叫んでいたが、身体の方が僕の云う事を聞かない。
ハロルドは泣きそうな顔をがばっと上げて、僕をじっと凝視した。
しかし・・僕の身体は・・口は、なおも暴走を続けた。
「いいんだよ、僕を彼の代わりに・・捌け口に使っても。僕はそれでもいい」
「・・・出来ない、出来ないよ!君を傷付ける、そんな事・・・・」
ハロルドは、目に涙をいっぱい貯めて僕を痛い位きつく抱きしめた。
・・その時分かったんだ。
僕は自分も知らない間に、このお人好しがとても大好きになっていた事に。
性別も何もかもどうでも良くなる位に。
そして、悲しい真実も知ってしまった。
僕の大好きな彼の本当に好きな人は、僕じゃないって事を。
僕はあの時ハロルドに
「君が来ても来なくてもいい、今夜10時に僕の家で待ってるから」
それだけ告げて、午後の講義に向かった。
去り際、ハロルドの涙を拭いながら唇にキスをした。
おずおずと・・触れ合って、暫くゆっくり舌を絡めて、愛撫する様に優しく・・包み込むように。
その時は少しでも、傷付いたハロルドの心を癒してあげたかった。
だからそんな・・うぶな恋人同士の様なキスを咄嗟にしてしまったのだ。
ただ・・唇が離れた時、何故だか僕は酷くふらついてしまい、うっかりハロルドに抱き止められてしまった。
・・・あれからずっと、身体がおかしい。
身体が疼いて火照って、やたら熱くて仕方ない。
何故だろう・・下腹部が熱を持ち、やたらじんじんと疼いて仕方無いのだ。
それに講義の間ずっと、オメガのフェロモン臭が何処からとなく漂って来ていた。
無論僕はアルファだから、体内でいくばくかのフェロモンを生成したとしてもオメガの様に広範囲にフェロモンを拡散させる能力は無い。
なのに講義中隣の聴講生(男)から僕が何故か
「おい、お前ちゃんと抑制剤くらい飲んどけ!襲われても文句言えねえぞ」
と、さも忌々しそうな表情で怒鳴られた。
だがしかし、前述の通り僕はアルファだ。
「何言ってる訳?僕はアルファなんだけど」
そう言って堂々と身分証を提示してやった。
すると周囲の連中が僕の身分証を取り上げて散々舐める様に見回した挙句、「丁重に」突き返して来た。
しかしなおも納得いかないのか・・・何度も首を傾げつつ、
「あれ?絶対にお前だと思ったんだけど・・・。おっかしいなぁ・・」
「じゃあこの匂いは誰が出してんだ?」
ざわつきだした教室で、准教授が痺れを切らせて
「あ~ハイハイ!一旦静まってくれ!窓側の子達、一旦換気するから窓を開けてくれないか」
そう大声で手を叩きながら室内の換気が号令と共に行われた。
しかし結局、その後も教室内からオメガ臭は消えぬままだった。
講義が終了した直後、「オメガを探せ!」の号令が何処からともなく響いた。
それと同時に周囲がざわつきだす。
(・・巻き込まれたくない)
このままでは犯人探しが本格化しそうだったので、トイレに向かうふりをして早々にその場を離れた。
僕は講義終了と共にバイトもキャンセルして、一目散に自宅であるボロアパートメントの一室に逃げるように帰宅した。
帰宅直後、僕の口から洩れたのは・・・自分自身を否定する絶叫。
「待てよ、嘘だろ・・冗談じゃない!」
彼等は間違っていなかった・・・・匂いは確実に僕からしていた。
パンツは滴り落ちた愛液で既にぐっしょりだ。
(・・・僕が、身体が・・・・発情しているんだ・・・・・)
帰宅後真っ先にトイレに駆け込んでズボンを引き下ろして、絶句した。
(女子のオメガの発情で見た事ある・・この光景)
なおも股間から滴り落ちる雫は、やたら甘い匂いをしていてうっすら白濁していて・・やや粘り気を伴っている。
身体の変化はそれだけではない。
身体中がびりびりして、やたら敏感になっている。
服が胸の突起や股間に軽く触れただけでも、つい声を上げてしまいそうになる。
それより何より・・一番辛かったのは・・・。
とにかく、男性型アルファである(「あった」が今は正解かも)僕が今まで疼いた事の無い場所がやたら疼いて仕方無いのだ!
・・・こんなの最早、”衝撃”を超えて”絶叫”したい位だ。
(・・・何で、今更)
・・・でも疑問も当然、僕は既に二十歳を超えている。
そんな年齢になってからの変質なんて、少なくとも僕は聞いた事無い。
産婦人科に行こうかとも考えたが・・・怖くて行けなかった。
そして、そうこうしてる内に・・・・夜は更けて行った。
ハロルドは、やはりその夜やって来た。
しかし、誘った当人である筈の僕は・・・・。
ベッドサイドに腰掛けてどうしようか悩み、考えあぐねていて約束を完全に忘れ去っていたのだ。
だから急に室内に響いたドアのノック音に思い切り飛び上がった。
慌てて駆けよってドアを開けて、ハロルドを見た瞬間・・。
(・・・・えっ)
ガクンと膝の力が抜けそうになって、ついハロルドにしがみついてしまった。
それと同時に・・胸の動悸が凄まじく高鳴り出した。
自分の身体なのに全く云う事を聞いてくれない。
今日に限っては全然自分の身体じゃないみたいだ。
思わず涙が滲み出て来た。
「カイル・・」
ハロルドはすかさず僕を強く抱きしめて、その場で何度も激しくキスをしてくれた。
しかし・・。
そのキスで身体中がまたも火が付いたように火照り、下腹部が激しく疼きだした。
それに呼応するかのように、またも股間が湿り出した。
はっきり言ってしまえば、僕の身体はハロルドに抱いて貰いたくてうずうずしている状態なのだろう。
だからなのか、それともハロルドのフェロモンに当てられてしまったからなのか・・。
僕の意識はもう、その時すでに半分飛びかけていた。
(・・・本当に・・オメガになっちゃったのかなぁ・・・僕)
薄れる意識の中で、そんな事をつい考えてしまっていた。
そのままなし崩しに部屋の中に移動したものの・・。
もう僕自体が我慢の限界だった。
耐えられなくなった僕は、ハロルドの眼前で全てを脱ぎ捨てた。
飛びかけた意識で必死に考えたけど、これ以外考えつかなかった。
・・・脱ぎながら、何時しか僕は泣いていた。
「君は全然気づいてなかったけど。僕は実は男なんだ。でも・・・」
「・・・えっ、嘘だろ・・」
ハロルドはあからさまに腰が引けている。
その視線は当然、しっかり僕の股間に注がれている。
「残念ながら君と同じ物が付いてるんだ。残念ながら」
全裸の僕を見て、ハロルドはしばし呆気に取られていた。
(・・・知らなかったんだもの、そういう反応になるよね)
僕はその呆けた顔に向けて話を続ける。
「何でだろ、何時の間にか僕・・オメガになってたんだ。だから、だから・・」
ハロルドは、ごくんと固唾を飲んで僕の話に耳を傾けている。
僕は・・・意を決して、ハロルドに訴えた。
「僕・・どうやら、オメガに変質したばっかみたいなんだ。あのさ・・僕の「初めて」・・君に貰って欲しいんだ。・・・君が好きだから、ハロルド」
その時、僕の身体からぶわっとフェロモンが飛散し・・股間から乳白色の粘液がとろり・・と太腿を伝って落ちて来た。
「誰かとの身代わりでもいい、一晩限りの遊びでもいい。君に愛して貰えるのなら、僕はどんな事もこの身に受け入れるから・・」
身体が、震える。
涙が止まらない。
蜜がトロトロと股間を滴り落ちる。
・・ああ、本気で人を好きになると、こうなっちゃうんだ。
僕はしゃくり上げながら、必死に眼前の愛する人に訴えた。
「抱いて欲しい・・ハロルド」
そう言った瞬間、ハロルドは全裸の僕を強く抱きしめてくれた。
・・その時僕は初めて、ハロルドの僕への想いを聞いた。
「俺にとって、カイル・・君はずっと口の立つ妹みたいな存在だった。確かに俺が好きなのはヨアンだ。けど、今から君を抱くのなら・・君をちゃんと俺の”恋人”として抱きたい。俺の可愛い彼女として・・いいか、カイル?」
・・・いつしか、ハロルドも泣いていた。
「・・・いいの?」
「カイルは可愛いよ、俺は好きだ」
「君の好みじゃないのに?」
「そんな物幾らでも修正が効く。今の俺の目には君しか映ってない・・カイル」
僕らは涙でぐちゃぐちゃになりながら、互いに笑い合った。
ハロルドも服を脱ぎ捨てて全裸になり、そのまま二人でベッドに移動した。
「汚い布団でゴメンね、忙しすぎて洗う暇も無くてさ・・」
「ハハッ、男の一人所帯なんてこんなもんだろ。むしろキレイな方だと思うけど」
僕らは現在正常位、僕が下でハロルドが上の状態だ。
ハロルドは未だセックスは未経験のチェリー。
僕は確かに経験豊富だけど・・それは”抱く側”の話。
しかも僕の専門は女の子だったしなぁ・・。
だから二人してどうしていいのかいまいち分からず、何処かぎこちない。
ハロルドはどうにか僕の両膝裏を抱えて、スタンバイまではしたものの・・。
「こ、ここでいいのかな・・」
「・・多分」
窪みに固く熱い物が擦り付きながら当たって来る。
それが・・次第に僕の濡れそぼった窪みに沈み込んで来た。
「・・ウウウッ・・・」
グリッ、ミチッ、ミチミチ・・・・。
破瓜の音が身体の深い所から聞こえ、同時に引き裂かれる様な鈍い痛みが走る。
さっきちらっと見たけど・・ハロルドのモノはかなり大きかった。
アレを”処女”になったばかりの僕の身体が呑み込むのだ。
かなり痛いだろうとは理解していた筈なのに・・。
(死ぬほど痛い!超痛い!「抜いて!」って絶叫したい・・・)
力任せに沈められる熱い肉の塊は、小柄な僕の身体にはかなり辛かった・・。
正直、身体の震えが止まらない。
「・・ふうーっ・・ううーっ・・・ん、ンンッ」
「・・痛いよな、ゴメンな・・・」
僕が必死に肩で息をしながら耐えてると、ハロルドは何度もキスして労ってくれた。
ハロルドの優しさに対してなのか、それとも純粋に痛みからなのか・・涙が急に溢れ出て来た。
「うウゥ・・・しょ、正直言うとね・・・死ぬほど痛い」
ハロルドは心配そうな顔で僕の額にキスしてくれた。
「・・・止めようか?」
その問いに、僕は泣きながら
「ここまでしておいて?」
そう返すと、ハロルドはすまなそうな顔で
「・・・だよな」
そう返して来た。
僕はこの一連のやり取りがあんまりおかしくて、つい笑いながら
「アハハッ!僕だったら、ここで遠慮する方が失礼って感じて最後までしちゃう」
そう言ってしまった。
直後ハロルドはさっきまで止めていた行為を再開し、全体重で圧し掛かりながら僕の身体の奥に更に侵入して来た。
「いっ・・グ・・あぁ・・・・!」
僕は声にならない絶叫を上げる。
そればかりじゃ無い、慣れない体位で身体中が軋んで辛い。
「あと少し・・」
メリメリと・・柔肉の裂ける音と共に更なる激痛が走る。
股間を粘液ではない何かが濡らしている。
(きっと、血だらけなんだろうな・・超痛いもん)
余りの痛さに更なる悲鳴が喉元まで出かかった、その時。
何かが僕の一番奥を擦り上げた。
「ひ・・・あ・・!」
思わず背が撓る位ぞくぞくした・・今まで感じた事の無い激しい快感を感じて、その一突きだけで僕はイッてしまった。
同時に僕の肉茎も反応して、ハロルドの腹に派手に粘液を吐き出して果ててしまった。
ハロルドは僕のそんな様子を嫌がるどころか笑って流してくれた。
「・・全部入った。カイルの中・・凄くキツイな」
その言葉は・・絶頂を迎えて落ちかけた耳が辛うじて拾っていた。
・・それから数分だったのか、数秒だったのか数十分だったのか分からないが。
抜き差しされる激痛で意識が戻るまで、僕は気を失っていた。
・・・再び意識を取り戻した僕が次に経験したのは、激痛と快感のスパイラル。
「いった・・・はああ!・・・・ヤダ、こんなの・・・・」
「すっごく気持ちいい・・・止まんない、止められないよ・・カイル」
「壊れちゃうよ!ぼくの・・・アソコ・・」
やり取りしてるその間も、ハロルドはせっせと腰を動かして行為に没頭している。
相当気持ちいいみたいで、恍惚とした表情・・。
でも僕はもう完全に地獄!
ハロルドのでっかいモノで子宮を擦り上げられて、快感に打ち震えたと同時に激痛に身を強張らせる・・・ひたすらその繰り返し。
僕の肉茎に至っては、もうどうしていいか分からない感じでハロルドと僕の身体の間で挟み込まれる形で、上下しつつ時折粘液を吐き出している・・。
今までは肉茎の方が主役だっただけに、もうどっちで感じて良いのか分からない。
僕が脳内で勝手にテンパっている間に・・次第に腰の動きが速くなって来た。
じゅっ、ズッ、グっ、ズズッ・・ずっずっ、ズッ、ズッズズッ・・・。
「ひ・・いたぁ・・・いった・・・あああ!」
泣きながら痛みを訴えたけど・・・当然聞き入れてもらえる訳無い。
もう辛過ぎて、痛みしか感じない。
しかし、それが突然終了した。
「クウウッ、出る!」
ハロルドの絶叫は、肉茎の根元の瘤の隆起と同時に発された。
最奥に突き込まれたその肉茎の先端から、子宮口を目指して迸る熱い粘液の塊が・・
脈打ちながら流れ込んで来た。
「ひいいい・・・ッ!」
僕はまたも絶頂を迎えて、悲鳴を上げつつ背を反らせて昏倒してしまった。
でも、意識の途切れる寸前まで・・・脈打ち、流し込まれる粘液の熱を感じ続けていた。
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