綺羅星の恋人 sidestory.4(仮)

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綺羅星の恋人 sidestory.4(仮)

<1>  僕の話をしてもいいかな?  ずっと昔、このお話の本編中で言ったらもう30年も昔の出来事。  僕が最愛の人と出会って、その人の子を産んで育てるまでに至るお話。  僕の名は、カイル・フレンセン。  性別は男、白人の両親の子として生まれた。  イギリス、スコットランド生まれ。  ロンドン郊外の小さな町で育った。  生まれた頃から何故かやたら僕はモテた。  まあそれは僕の性別である”アルファ”と云う所に起因している事は否めないかな。  背は大して高くないし(むしろ低かった)、他のアルファの様にそんなに見た目が華やかな訳でも無いし、特に何かが抜きんでて目立った記憶も無い。  でも、幼少期から何でもそつなくこなせた。  人によっては悩みまくる対人関係も、人あしらいの上手い両親のもとで育った僕には容易かった。  頭もまあまあ・・といいたい所だが、それでは死に物狂いで机にかじりついて勉学に励む学友に失礼かもしれない。  何故なら、僕はまともに勉強をした事は無いんだ。  覚えるべきことは僕の頭にすぐ入る。  教科書を一回読めば簡単。  テストでも何時も満点。  だって、教科書を真面目にさえ読めば、答えって大概教科書の中に書いてあるじゃないか。  それをどうやったら間違えられるんだい?  だからナーサリーでは、僕は一度教科書を開いたらハイお終い。  「勉強大嫌い」とか「どうやったら満点取れるんだろう」なんて愚痴は言った事が無い。  寧ろ僕にすれば、どうやったら満点以外が取れるのか彼等に聞いてみたい位だった。  パブリックスクールでもずっと同じ。  どちらかというと、余りに退屈な学校に行くよりもっと楽しい事ばかりに目が行って、そっちの方が大変だった。  クラブ? スポーツ?  冗談でしょ。  誰が好き好んで、かったるいスポーツ必死にやって汗水垂らすって言うんだい?  今時”青春”なんてマジ青臭い。  もともと僕はインドア派だから、断然ソッチ系さ。  ヤバそうな事はばれないように一通りやった。  でも煙草は僕には向いてないからさっさとやめた。  吸うのは苦にならなかったけど、口から臭う煙草臭が・・。  親にすぐばれて大目玉喰らってからは、一度も吸ってない。  酒はベッドの下に隠してたまに寝酒を楽しんでる。  こっちは残り香がばれないように、ちゃんと対策もしてる。  ドラッグは・・ラリってるガールフレンドを見て、ドン引きしてキメるのを止めた。  だってさ・・・。  めっちゃ可愛い娘がマッパであんなに涎垂らして、半分白目向いてケタケタ笑ってるんだよ?  あん時あの娘、頭ブンブン振り回して失禁もしてたっけ・・。  MDMA一錠であれは無いわ・・って流石に思うっしょ?  ハーブ系とか大麻も、キメてるやつ見てると・・・とにかくげんなりする。  皆あれキメてセックスするらしいけどさぁ・・。  あんな飛んじゃってる奴、抱きたくないっしょ?  もう一回言うけど、白目向いて涎垂らしておしっこ漏らしちゃってるんだよ?  あそこはぐじゅぐじゅで開ききって、全然締まりも無いし(僕の時はそうだった)。  僕はヤダ、絶対。  それにほら、僕って頭いいじゃん?  このラリ顔の先にどういう事態が待ってるのか、考えちゃう訳よ。  そもそもハメてる途中に救急車呼ばなきゃいけなくなったらどうする?  僕達学生が手に入れられる位安価なドラッグが、当然正規品な訳無いでしょ。  逆に自分が危ないヤツ掴まされて、飲んで死にかけるだけならまだしもさぁ。  後遺症とか残ったまま残りの長~い人生生きるなんて地獄、ホント冗談じゃない。  粗悪品掴まされて人生棒に振るなんて、少なくとも僕は御免だ。  だからクスリ系は速攻諦めた。  代わりに僕がハマったのが・・セックス。  もう毎日セックス三昧。  ジュニアハイスクール卒業までに50人は軽く喰った。  すっげえカラダの相性良くてのめり込んだ子も何人かいたなぁ・・。  ああ、先に言っておくけど。  僕はどノーマルな、女子好き。  このお話が基本、「同性愛」がテーマだとしても僕自体は誓ってゲイではない。  ハイスクールではもう、遠慮無しの手あたり次第。  一度クラミジア移されて、マジで大騒ぎしたのは痛かった・・。  結局それでも、在学中に自分と同じクラスだったイケそうな女子はほぼ全員喰った。  ああ・・それでも彼氏が五月蠅そうな女子と先生だけは無理だった。  流石に50過ぎのお婆ちゃん先生や、ガチムチのオッサンのケツを穿ろうなんて夢にも思わないって。  結局、適当に受かった大学に入学するまでさんざんヤリまくったせいで、色々あって居辛くなって大学は実家から少し離れた所を受けた。  とは言っても、ロンドン市内だけどね。  そこでまあ、普通なら「懲りる」んだけど。  僕って困った事に、全然「懲りなかった」んだよねェ・・。  入学早々手あたり次第に女子を喰いまくってて、遂に地雷踏んじゃった。  大して綺麗でも美人でも無いけど、やたら上品で物腰が柔らか~い女子が居たんだけど。  ナンパしたその子にこっ酷く振られたせいで、僕の心に火が付いた。  「意地でもこの子を落としてやろう」ってね。  散々付き纏って、何度もプロポーズしまくった。  ・・・彼女の迷惑とか全く考えずに、ね。  しかしそれがマズかった。  皆さん大体想像ついてるだろうが・・彼女は貴族のご令嬢だった。  しかもかなり身分の高い方。  もうこうなると、居場所が無いなんてモンじゃない。  堪らなくなった彼女が親に訴えて、屈強なガードマンが彼女に付く様になった。  ・・・何故か、というか当然僕にも。  但し僕に付いてるのは、彼女の半径五メートル以上に近づかない様にする為。  大学にも被害届が出されて、僕はその日から変態もしくはキ○ガイ扱い。  止む無く懇意にしてたゼミの教授に泣きついて、どうにか「留学」って事で一旦大学から逃げた。  はぁ~・・・。  失敗した。  完全に黒歴史。  流石に僕でも、これには懲りた。    留学先はアメリカ合衆国。  ニュージャージー州の某名門大学にどうにか滑り込んだ。  但し、だ。  流石に両親も渡航費までが限界だった。  だから滞在費用と授業料は全て自分で働いて捻出しなくてはならない。  取り敢えずもう必死こいて働いた。  形振りなんて構ってられない。  留学当初、服のショーウインドー覗いた事なんて一度も無いや。  ケーキ屋さんとか、美味しそうなドーナツとかフライドチキンとかなら穴が開きそうにな位ガン見で覗いてたけど。  金になるなら、ヤバい事と身売り以外は何だってやった。  家庭教師にブリティッシュイングリッシュの講師、スーパーのレジ打ちにファストフードの店員なんかもやった。  毎日日付が変わるまで、ひたすら汗水たらして働きまくった。  勉学は辛うじて、頭の出来の良さに助けられてどうにか単位を取って来た。  お陰で性欲なんか吹っ飛んじゃってさ、ずっとご無沙汰。  もう毎日くったくたになるまで働いてるんだから、そりゃ性欲なんか二の次だよね。  しかも迂闊に単位は落とせないから、勉強にも手は抜けないときてる。  だって成績落ちたら強制送還されちゃうかも・・じゃない?  僕をどうにか留学者の名簿に捩じ込んでくれた教授からも、  「くれぐれも俺の顔に泥を塗るな! 単位一個でも取りこぼしたら、イギリスに強制送還だからな!」  って、しつこく念押しされてるんだよねぇ・・。  だからもう最初の数か月は死に物狂いだったっけ。  お陰で体重はがた落ち、痩せすぎてズボンがスッカスカになっちゃった。  もともと太い方じゃ無かったから、まあまあ悲惨な見た目になっちゃってあの時は流石に参った・・。  それでもアメリカは物価がまあまあ安い。  でも逆に言えば、時給が安いって事なんだよね・・。  食事は基本賄いとバイト先の残り物を貰って凌いで、それでもヤバい時はパン屋で貰ったパンの耳。  それも無い場合は・・ただひたすら我慢。  昼休みはよくカレッジの隅の芝生に寝転んで、日向ぼっこしながら空腹を紛らわしてた。  (ああ・・・光合成でついでにランチも合成できないかな)  ・・なんてくっだらない事ばっか考えてた。  そんな時、僕に声を掛けて来たのがハロルドだった。  その日も雲が幾分空を覆っていた物の、バッチリ太陽が顔を出していたお陰でポカポカ陽気で日向ぼっこには最適な日和だった。  何時もの様に芝の上に寝転んで、する事無いからぐうすか寝ていると、それを心配そうにじっと覗き込んで来た青年がいた。  僕が何でハロルドに気が付いたかと言うと・・。  寝返りを打ったときに、うっかりハロルドの足に頭を乗せちゃったんだ。  ・・まあ、それ程近くで僕をハロルドがじっと見つめてたって事なんだけどね。  「・・ねえ君、女の子なのにそんなに痩せ細って・・ダイエットでもしてるのかい?」  「ふえっ?」  昼寝爆睡中に急に頭を堅い物に乗り上げて、寝惚けつつも顔を上げた所。  ハロルドは僕の前にしゃがみ込んで、かなり心配そうにじっと僕を見つめながら話しかけて来た。  「ダイエットだとしたら、悪い事は言わない。すぐに止めて医師の診断を仰いだ方がいい。その痩せ方は異常だよ」  「いや、あの・・・ええっ?!」  「いいかい、人は食べないと死んじゃうんだよ?」  寝起きの頭が急な展開について行けずに、ただただあうあうしてると・・。  ハロルドはにっこりと微笑んで、小脇に抱えていた紙袋を差し出して来た。  よく分からない状況ながら・・起き上がって紙袋を受け取ると、ハロルドはとても嬉しそうに笑った。  「ほら、良かったらこれを食べて。俺は今そんなにお腹空いてないんだ。この昼食は友人の所の女中さんの作ったサンドウィッチなんだけど、彼女料理上手でとっても美  味しいんだ。デザートにリンゴも入ってる、さあ食べて」  「あ・・アリガト」  照れながら頭を下げて、紙袋を開けると・・・。  ラップに包まれた綺麗な三角形のハムと卵のサンドウィッチが二切れ、タップリの千切り野菜とハムのサンドウィッチが二切れ、ポテトサラダのサンドウィッチが二切れ、 それに丸ごとのリンゴが一つ入っていた。 「・・・いいの?」  恐る恐る尋ねると、 「ああ」  と大きく頷いてくれた。  恥ずかしい話だが、それからの記憶は曖昧にしかない。  正確には・・サンドウィッチを喉に詰まらせた所しか記憶がない。  それ位無我夢中で、一心不乱にサンドウィッチにかぶりついていたらしい。  あんまり無我夢中にかぶり付く僕に、手に持っていた水筒も差し出してくれた。  ・・その後。、結局食後の飲み物もハロルドに奢って貰った。  ハロルドは終始満面の笑顔で缶コーヒーを手に、僕をただじっと見つめていたんだ。 「良かった。君はどうやら拒食症じゃなさそうだ。本当に安心したよ」  と、嬉しそうにそう言って。  ・・それが僕の、ハロルドとの最初の出会いだった。
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