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その次の日、悦は約束通り健太くんと少し遠い山まで、40分程かけて歩いて行ったが、そこの山の斜面には、近くの製材所のおが屑を捨てている場所があって、そこに到着した途端に、カブトムシのオス二匹とノコギリクワガタのオス一匹を、目の前の木に止まっていたのを、呆気なく捕まえた。
その前日は、三時間ほどかけて、カブトムシのメス一匹だったのにだ。
「よかったな悦。でも、そこらのおが屑をよく見れば蛹もいるし、掘れば幼虫もいるぞ」
「ほんと?」
カブトムシの蛹なんて、それまで悦は見たことがなかった。
ところがよく見ると、おが屑の斜面に、小さな穴が開いているところがあり、よく見ると、おが屑色をした、カブトムシの蛹がいたのである。
蛹のくせに既に立派なツノを持ち、飴色のその体は、まるで彫刻作品のように見事で、突くとくるりんとお尻を振って、反応する。
悦はそれを、なんとも神秘的で、小気味よく思ったものだ。
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