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「うん、午前様のときもあってタクシーで帰るんだけど、次の日が本当にきついの」
美代もブランコに揺られながら大声で言う。
「結婚して専業主婦になればいいのに。今日デートしてた俊太と」
「そうだねー。だけど仕事が嫌いなわけじゃないんだよ」
美代はブランコから降りて小山内くんの横に立った。小山内くんも漕ぐのをやめる。
「ねえ、私、図画工作が好きだったでしょう。CADオペレーターの仕事って図画工作に似てるの」
「へえ、僕も医者になりたかったな。僕みたいな病気の子を助けたかった」
美代は眉を下げた。
「ずっと一人で遊んでたの?」
「美代が中学にあがってから視える女の子が公園に来たんだけど、僕を見ると怖がって泣き出しちゃった。足が無いからかな。だからずっと一人だった」
小山内くんはそう言って悲しそうな顔をした。美代は小山内くんの手を引いてジャングルジムの下に行った。
「これにもよく登ったね。小山内くんは足がないけどあるようだった。またどちらが早く登れるか競争しようか?」
「うん、僕、負けない」
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