37人が本棚に入れています
本棚に追加
続々と他のメンバーも出勤してきたので山岡は椅子に座った。
「良い霊でもね、ずっとこの世に留まっていると本人に自覚がないうちに悪い霊になっちゃうんだ。可哀そうだけどまた現れたらお祓いに行こう」
美代は混乱した。俊太の弟が小山内くんで悪い霊。まさか、だって小山内くんはいつも朗らかだった。俊太と出会わせてくれたのだって小山内くんかもしれないのに。
営業の野口がハンカチで顔を扇ぎながらエアコンのリモコンを見た。
「外は暑いけど、ここはクーラーが効いてますね。汗がもう収まりそうだ」
山岡が答える。
「ああ、今日は特に涼しいかもな。明日からまた暑くなるよ。今度の仕事がひと段落したらビアガーデンでも行こう」
すっと体が楽になった。美代はもう二度と小山内くんに会えないのが分かった。小さいときの思い出が胸を締め付ける。
終わり
最初のコメントを投稿しよう!