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ここは新橋にある設計事務所だ。山岡は設計士で美代はCADオペレーター。CADオペレーターは他に二人いる。みんな二十代の女子だ。他に営業の男性が二人いるから従業員は六人だ。五十代の取締役がいる。
「小山内くんは良い霊だったの?」
山岡はそう言って仕事の手を休めている。美代は図面を書きながら答えた。山岡の席は美代の斜め前。ちょうど話しやすい位置関係だ。
「良い霊でしたよ。部屋で色々お喋りしました。日曜日はよく公園にも一緒に行きました。小山内くんは十歳で、色の白い可愛い男の子でした。視えたのは私が小学生の間だけですね」
「ふーん。それで高校生まで他の幽霊も視えたってわけか。小山内くんは成仏したのかな?」
「さあ、たぶんしてないでしょう。私が小学生だったから友達だったんだと思います」
時計を見るとお昼だった。山岡はお弁当を奥さんに作ってもらっているのだが、美代たち三人のCADオペレーターはいつもコンビニで買って来ている。美代は紀香という先輩と絵梨という後輩に言った。
「今日は私が買って来ますよ。みんな何がいいですか?」
紀香がメモ帳とペンを取る。
「私はスパゲティ、絵梨ちゃんは何がいい?」
「冷やし中華がいいです。なかったら冷たい蕎麦かうどん」
美代は紀香からメモ書きを受け取った。事務所を出てエレベーターに乗る。設計事務所は五階にある。
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