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コーヒーを三分の一ほど飲んだとき、目の前の通りを彼氏が横切った。白いシャツにスラックスだった。白い肌に柔らかいくせ毛。小山内くんが大人になったようだ。小さいときから異性の好みは変わらない。
彼氏が店に入って来て美代の横に座った。
「お待たせ。外は暑いな」
「今日の最高気温は三十五度だって。お互いオフィスワークでよかったね」
美代の彼氏は俊太といって、システムエンジニアをやっている。知り合ったのは友人の結婚式の二次会だ。俊太は新郎側の友人で喋っているうち、良い感じになった。連絡先を交換して初めてのデートはお台場に行った。
「この前決めた焼き鳥屋さんでいいか?それとも他に行きたいところがある?」
「ううん。早く行こう」
美代は立ち上がって口角をあげた。
焼き鳥屋さんは藍色の暖簾に木の引き戸で開けるとカウンター席が六人分、テーブル席が四席あった。店員の案内でテーブル席に着く。俊太が美代に訊かずに言った。
「生中二つください」
美代は異論はなかった。飲むときはいつも最初は生中だ。
店員が行くと俊太はパウチされたメニュー表を広げた。向きは美代の方から字が読めるように向けている。
「焼き鳥は四種セットを一人一つ頼もうか?他には何がいい?」
「そうだね、キャベツサラダとうなぎの肝焼きが食べたい」
「分かった。僕も肝焼きを注文しよう」
俊太は店員を呼んだ。
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