七人同行

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七人同行

 一五年前にブログをやっていた。初めは何となくその日の出来事を綴っていたが、ある日、友達と有名な心霊スポットに行ったことを記事にすると、アクセス数が急に伸びた。それに味をしめて、以降は心霊関係のことを書くことが多くなった。  心霊スポットに行って、写真を撮って記事にする。それを繰り返している内に、近場ではネタが無くなり、遠征することを考えた。真っ先に思いついたのは青木ヶ原樹海だった。元々興味があり前々から行きたいと思っていた。  しかし、当時住んでいたのは四国で、稼ぎも休みも少ない私からしてみれば、気軽に行くという距離ではなかった。それで、近場にある山を青木ヶ原と偽ることを思いついた。  休みの日に、山に分け入って、それらしく見える場所を探したが、起伏の激しい四国の山は、木々が生い茂っていても、樹海と呼ぶにはどうにも雰囲気が出なかった。良い場所を見つけられないまま、そうとうに歩き回り一応写真を撮ったものの、どれもイマイチで、結局、「今回の計画はボツだな」と諦め、「やはりズルは上手くいかないものだ」と反省した。  帰路は来た道を引き返したつもりだったが、通った覚えのない川に出た。山を舐めていた私は、自分の感覚を頼りに、それらしい方角に進路をとり直し更に歩いた。  散々歩いたあげく、再び同じ川に出たときには、自分が山に迷っていることを認めるしかなくなった。暮れかけている日と疲労が不安に拍車を掛け、私は泣き出しそうになった。  少し休もうと、大きめの石に腰を掛け水を飲むと、ペットボトルに残った水の少なさに、また不安になった。 「あら」  不意に背後から女の声が聞こえて、私は驚いて立ち上がるのと振り向くのを同時にやったが、周りに人の姿は無かった。それでも確かに、少し歳食った感じの女の声を聞いた。  恐くなった私は、その場から逃げだした。  山の中を少し進んだところで、人の姿を見つけた。二十メートルほど先に、六人か七人かの団体が歩いていた。それで、さっき声が聞こえたことに無理やりに納得した。  格好を見る限り、お遍路さんだと思われる彼らに着いていけば、山から下りられると思い、後を追おうとすると、 「着いて行っちゃだめ」と、また背後から女の声がした。  私は振り向かず、彼らの後も追わず、「無事に山から出たら、二度と心霊スポットなんかに行くもんか」そう思いながら、デタラメに駆けた。
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