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翌日の深夜0時半、修正作業を終えたさつきは半泣きで帰宅した。窮屈なスーツを脱がずにベッドに転がると、スマートフォンを開いて、無心でSNSのアイコンをタップする。
May@限界OL
『今帰宅。本当、最悪。もう無理』
自分の頭に浮かんだ言葉を率直に書き連ね、ろくに推敲もせずに投稿する。大きなため息をつくと同時に涙が流れてきた。さつきはダイレクトメールを開き、徐に一人のユーザーを選択した。
May@限界OL
『また、お願いしたいです』
次の瞬間には返信が返ってくる。相変わらず早いな、とさつきは思った。
meiko
『何回分?』
May@限界OL
『二回。前と同じ駐車場希望です』
手汗で、スマートフォンと手の境目が分からなくなる。
meiko
『4で。土の8時』
やりとりが切れた直後、突如としてさつきは目眩に襲われ、洗面台に駆け込んで嘔吐した。目を開けているはずなのに、真っ暗で何も見えない。
やがて、ブラックアウトした無地の視界に、就職のとき保証人になってくれた養護施設の先生が浮かんできた。言ってしまえば楽になるだろうか?なんて言う?正直にーー。
「私は、クスリに手を染めました」
さつきは嗚咽しつつ小さく呟き、自分の行いを反芻した。今更相談なんてできっこない。
これで最後、これっきり辞めにしよう。そう心に誓い、震える手で蛇口を捻り、水を口に運んだ。
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