夕立、タバコ、そして俺

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「それにしてもクソあちいな」と独りボヤいた。空気の入れ替えがみるみる進んでいく反面、余計に蒸し暑さが部屋を染めていった。夏の暑さが苦手になったのはいつからだろうか。ガキの頃は無駄に日焼けしていたっけ。自分の青白い腕に見つめて軽くため息を零した。  気分転換でもしようと、ポケットに手を突っ込んだ所で「あ」と声が漏れた。そうだった、タバコ切らしてたんだわ、くそ。  窓を開けながら思案すること1秒。ヤニの欲求に勝るものなし。めんどくせえなあと思いつつ、テーブルに戻り、家の鍵と財布を手にする。  ふと、開けっ放しの窓を振り返った。相変わらずの青々しい空と蝉の鳴き声。ただそれに混じって、鼻を掠めたのは雨の匂いだった。  まさかな、と思って玄関を開けると、窓側とは反対の空には分厚く黒みを帯びた雲が重たそうに迫ってきていた。こりゃ降るなと顔を顰める。  それにしてもサイアク。もしこれが腹減ったとか、気の乗らないデートとかだったら外に出るのを諦めて、このままダラダラと家に籠っているんだけど。  だけどタバコなら話は別。それなら仕方ない、その欲求に勝るものなし。俺は脇に立てかけていたビニル傘を持ち、窓を閉め忘れたこと気づきながらも、そのまま外へと出かけていった。
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