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アルは初めて気が付いた、という顔をして驚いてこっちを見てる。
何よ、あたしの考え過ぎみたいじゃないの。
「その質問に対する答えは、第一夫人だな。そして、他に妻を娶ろうとも思ってない」
「えっ?? そうなの??」
「必要ない」
「……貴族なのに?」
「まあ、うちはそういうの気にしなくていい家なんだよ」
貴族に対しては、否定をしなかった。
つまり、平民じゃないのね、やっぱり。それよりも、それよりもよ。
「あたし一人でいいなんて、ちょっとおかしいわよ。それなら、もっと綺麗な人を置こうとは思わないの?」
「じゃあ聞くが、ウィルダはどうなんだ? 私と結婚したら、美しい男娼でも置きたいのか?」
「ふざけないで! あたしがアル以外の人と一緒にいたいわけがないでしょ!?」
暗がりでアルが急に真っ赤になったのを見て、あっ、あたしなに偉そうに叫んでるのかしらって気が付いた。
「ウィルダ……今のはちょっと……」
「何よ?」
恥ずかしそうな顔をしたアルの唇があたしの頬に触れて、そのままあたしの唇にも触れる。
「反則じゃないか?」
アルは離れたらボソリとそう言って、もう一度あたしと繋がった。
今迄とは違う、お互いを探るようなキス。どうしてこんなに簡単にアルを受け入れてしまうんだろう。
でも、ハッキリと思い知ってしまう。
好きなんだ、あたし……。
「おかしいわ、あなたみたいな素敵な人が、あたしみたいな女をひとり娶って満足だなんて」
あたしはアルに抱き付きながら、どうしてあたしなんだろうって疑問に向かう。
「ウィルダがいいって、思った」
「……どうしてなのかしら」
「それは、自分でもよく分からない。だから既に恋に落ちていたのだと気付いた」
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