プロローグ

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プロローグ

拳銃の引き金をゆっくりと引くと、グリップに力を込めて「それ」が降りて来るのを感じる。あたしは、「それ」が銃の動力になったのを確認してから引き金を引いて、20メートル先にある的に向けて発砲した。 「……まだ、改良の余地あり。どうもタイミングが難しいわ」 拳銃を下ろして後ろにいた2人に伝えると、ああまたか、とあたしは悔しさに顔を歪めながらその場を後にする。ちなみに、あたしの銃は派手な発砲音など立たない。勿論、あたし以外の……もっと加護の弱い人が使えば物理的な加圧が必要になって、発砲音が立つこともある。 精霊銃(スピリット・ガン)。 我が社の……あたしの発明品にして、我が国の偉大なる産業。火薬を用いないし実弾なんかも必要ないから、とにかく利便性が高い。ちなみに、いま試していたのは新作の拳銃型精霊銃(スピリットガン)の試作品。 名称はピストルになるのかしら。精霊の力を込めて発砲するタイプの銃で、軽量化を実現させて男性なら片手でも扱える。女性にだって、簡単に扱える画期的な商品なの。 「ウィルダ、女性に扱える銃なんて、滅多なことを考えるものじゃないよ」 「余計なお世話よ。私が銃を持とうとすることに、どうしてそんな懐疑的なの?」 この日は、幼馴染で領主の息子であるマティアスが隣にいる。金髪碧眼のマティアスは、それはもう嫌味なくらいに悪い所のないお坊ちゃま。あたしのことをよく心配して、こうして様子を見に来ることが多いのだけど。まあ、我が社の治める税金のお陰で家が潤っているから、見張られるのは仕方がないの。
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