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なんで今日、祈りを捧げるって分かったんだろう。アルは、やっぱりあたしのこと、知っているのかも。なんだかチクっと胸の奥が痛んだ。
「じゃあ、その前に……部屋で都合の良い時に……太陽神に祈りを捧げて欲しい」
「太陽神様に……?」
「やり方なんてどうでもいい。君ならきっとできるから」
アルはそう言うとあたしの右頬に軽く音を立ててキスをした。
「迎えに上がるよ、ウィルダ」
そっと、囁かれる。甘い甘い声をしているアル。あたし、まだあなたのこと、全然知らないのに。
「分かったわ」
どうして、分かってしまったんだろう。アルが迎えに来てくれるって、なんであたしは受け入れてしまったの?
アルはやっぱりグレーの彼を連れてどこかに行ってしまった。あたしはそのアルの背中を穴が開くんじゃないかってくらい見つめた後、やっぱりアルとは仲良くなれるかもしれない、なんて、口元を緩ませて自分の家の馬車に向かった。
満月の夜。部屋の中には月明かりが入って来る。町はあたしが発明した月の灯に灯されて、今日はとっても明るい夜。
あたしは部屋の中で、やっぱり窓辺に向かって手を組んだ。
「太陽神様、満月の夜です……」
どう祈ればいいか分からないけど、挨拶みたいに祈ってみる。月の女神様に祈る時と同じで、太陽神様にも祈りが届けばいいんだけど。
その時、どこかで見たような、キラキラとした光がまた、部屋の中に降り注いだ。これ、夕方にアルと会った時の——。
「こんばんは、ウィルダ。祈りを捧げてくれて、ありがとう」
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