満月の日

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声と共に、アルが私の前に現れた。キラキラとした光を浴びて、当たり前のようにそこに立っている。月明かりに照らされるとアルはその綺麗な鼻筋と整った目が目立つ。姿がとっても神秘的で、あたしは彼のことを太陽神様の化身ではないかとすら思う。 「アル……。どうして、ここに来られたの?」 「今夜は、満月の夜だから」 「それ、理由になってないわ……」 「前回は新月だっただろ? 君が月の女神にしか祈りを捧げなかったから、ライ麦の精霊に身体を借りることしかできなかった」 アルがそう言ったので、あたしは目を丸くして驚いた。あの日、ずっとあたしの側についていたくれた精霊が、アルだった?? 「アルはずっと、あたしといたの? あの、狐みたいな姿で?」 「その前に、君と一緒にライ麦の精霊に会ったから出来ただけなんだけど」 アルは、何を言っているのだろう? あたしは精霊を目に見ることができるけど、昼間からハッキリとその姿を捉えたことはない。もしかして、アルは昼間から精霊が見えているってことなのかしら? 「君のことを、ずっと探していたよ、ウィルダ。私は、太陽神の加護を……君は、月の女神の加護を持っているんだね?」 「アルは、太陽神様の加護を?? そんな人が、いたのね」 まさかアルがあたしと同じような加護を持っていたなんて。今迄ずっと自分と同じような人はいないと思っていたから、同類を見つけられたのだと思うと、とっても嬉しい。 「あたし、あなたとお友達になりたかったの。初めて会った時から」 「友達……。それはちょっと、まどろっこしいな」 「まどろっこしい? 友達には、なってくれないの?」
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