満月の日

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アルが当然のように言った。あたしはその言葉に息を呑んでしまって、明らかに動揺しているのを悟られた。君が何者でも、というのは、つまりそういうこと? 「結婚って、身分でするものだと思うのだけど」 あたし、アルのような人には会ったことがない。 「それは、身分が欲しい人間のこだわりに過ぎない」 そう言って微笑んだアルが、そっとあたしの顎を掴む。 さすがのあたしだって、この行動をとったアルの望みは分かってしまった。そっと近づくアルの唇を受け入れて、初めてのキスをする。 「拒絶するのは止めたのか?」 「運命かどうかを確かめてみただけよ」 「で、どうだった?」 アルが覗き込むようにしてあたしを見ている。実際のところ、あたしにはもうよく分からない。 「どうかしら。してみたら分かるかと思ったけど、そうでもないみたい」 「まだ、唇が軽く触れただけだしな」 当たり前だろとでも言いたそうなアルに、恨み節を言いたいあたし。 「やっぱりあなたって……」 危険な人ね、と言おうと思って止める。あたしは、アルを受け入れたのだから。 「また、次は新月の日に。祈りを捧げる前に太陽神に祈って私を呼んで」 急に今から消えそうなアルの口調に、びっくりするあたし。 「もう、どこかに行ってしまうの?」 「君は月の女神に祈る時間だ」 アルに言われて、そう、女神様に祈らなきゃいけなかったと気が付いてしまう。 「アル……」 突然いなくなるのだと知らされて、次はまた半月後だなんて納得できない。アルは最初からずっと勝手すぎるんじゃないかしら。
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