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これが恋なら?
あたしは月の女神様に祈りを捧げて、その姿をしっかり目に焼き付けた。いつも美しい女神様はウェーブのかかった茶色の髪をしていて、とても意志の強い目をしている。その日、女神様はあたしがアルに会ったことを知っていた。
「ウィルダ、あなた、恋をしたのね」
「分かりません。これが恋なのか……」
「随分と、その人のことを考えているのに?」
女神様に指摘されて、確かにあたしはずっとアルの事ばかりを考えていたわって気付く。でも、それが恋だと言われても、素直に認められるほどあたしはアルのことを知らない。
「謎が多い人だから、気になってしまっているだけなんじゃないかと思うんです。だけどあたし、彼にプロポーズをされた時……嬉しかったのも確かで」
「まだ、自分の気持ちがハッキリしないの?」
女神様がくすりと笑うと、あたしは何かを見透かされた気がして恥ずかしくなる。
「アルは、太陽神様の加護を持っていると言っていました。突然現れたり、消えたり……。だからあたしたちは、一緒になる運命だと」
「太陽神の加護を持っていたからって、別にあなたと運命だなんてことはありえない。月と太陽は同時には輝けないでしょう?」
女神様が当然のように言ったので、やっぱり運命だと言ったアルの言葉は何の根拠も無かったのだと落ち込む。
「でもきっと、それはただの口説き文句に過ぎないのでしょうね。ウィルダも、もう少し時間が経てば分かる日が来るわ」
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