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女神様はそう言って優しい顔でくすくすと笑っていた。あたしにはその意味が全然分からなかったけど、あたしの中のアルへの気持ちを恋だと断定されてしまったから、気持ちを誤魔化したところで意味がないのだろう。
「まだ、よく分からないのは……、あたしが子どもだからですか?」
「子どもというより、ウィルダはまだ知らないだけなのよ」
これが恋……。どうしてなのか分からないけど、気付いたら落ちていたのだと思う。
次の新月が待ち遠しくてたまらない。だってそれまで、アルに会うことができないから。
どうしてだろう、あたし、あの人の事なんて何にも知らないけれど、次に会ったらまた、きっとアルの望んだことを素直に受け入れてしまう予感がした。
「ねえ、マティはいつ結婚するの?」
今日も会社に来ているマティアスに、何気なく質問をする。あたしに言わないだけで、マティアスには絶対に縁談の話が来ているはずだ。
「いや……いつって決まっているわけじゃないけど。急に何?」
「あなたは次期領主だから、そろそろ実を固めるころでしょ?」
当たり前のようにあたしが言うと、マティアスが怪訝な顔をした。別に変なことを聞いてるわけじゃないのに。
「僕は、別に結婚なんか興味ないよ。でも、みんなはそうやって当たり前のように押し付ける」
「あなたが次期領主だから仕方がないわよ。貴族様はみんなそうなんでしょう?」
「ウィルダだけは、そういう話をしなかったのに……不愉快だな」
マティアスは、普段あんまり怒らない。あたしがどんな失礼なことを言おうが、彼を振り回そうが、呆れこそしても怒ったのを見たことはなかった。
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