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「事故よ、事故」
「……やっぱり、結婚てめんどくさそう」
お姉様は、お義兄様と結婚したこと後悔してるんだろうか。責任とか子どもとか、なんか窮屈そうにも見える。
「面倒よ、ものすごーく」
「やっぱあたし、研究に生涯を捧げようかしら……」
「でもねえ、最近思うけど、面倒だから意味があるの」
「説得力ないわ。じゃあなんでここにいるの?」
お姉様が結婚生活から逃げて来たこと位は分かる。意味があるなんて言ってる本人が、一番結婚から逃げているじゃないの。
「あの人に、思い知らせるためよ」
「……わざわざ?」
「そう。この時間に意味があるの」
「なんか馬鹿馬鹿しい。やっぱり、あたし結婚は向いていないかも」
「ウィルダも、そんなことを考えなきゃいけない歳なのねえ。お見合いしてるの?」
「別に……」
あたしは、お姉様が座るソファの向いに座った。なんとなく、この機会に色々聞いてしまおうと思う。
「お見合いはしていないんだけど、気になる方がいて……。この間、プロポーズをされたわ」
「ええええ?! じゃあ、あとは返事をするだけってこと?」
お姉様がものすごく目を光らせてこっちを見てる。長く伸びた髪の茶色い2つのおさげが揺れて、まるで凶器みたい。さっきまで全然興味無さそうにあたしと話してたくせに、前のめりになって話を聞きたいわオーラがすごい。
「多分、普通だったらそうなの。でも、相手のこと全然知らなくて、それなのに向こうはあたしのことを運命だって言う。あたしはその人の事、きっと好きなんだろうと思うけど」
「あらあら。恋だわねえ」
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