これが恋なら?

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「あたしは、その人と恋人になりたい。それから、相手を知りたいわ。でも、その人はあたしと結婚したいと言った」 「……財産狙いの線は?」 「恐らくそれはない。今迄の人たちとは違って……貴族でお金に困っていない人みたい」 「なるほど、相手は貴族かあ……。何番目の奥さんになるかで話が違うわね」 お姉様は唸っていた。そうか、アルのお嫁さんって、あたし一人じゃないんだ……。それはつまり、アルが何人も抱える奥さんのうちの一人に、あたしがなるっていうことなのね。 「やっぱり、貴族に嫁ぐなんて、あたしには無理かも」 アルの素敵な笑顔を思い出して、あんな人があたし一人のものになるわけがないと理解をする。もう、忘れた方がいいのかな。 「好きなんでしょ? その人のこと」 お姉様が腕組みをして、得意気な顔であたしを見ている。こんな時ばっかり既婚者風を吹かせないで欲しいわ。 「好きだけど……自信はないの。ただ、姿かたちが素敵だったからときめいてしまっただけなのかもしれない」 あたしは頬杖をついてお姉様をじろりと睨む。今現在結婚生活がうまく行っていないお姉様に、結婚を薦められる気なんてさらさらないのよ。 「あなたみたいな、ときめきを知らなそうなお堅い研究員が素敵だと思ったんだから、どんな人なのか是非見せてもらいたいわね。別にいいんじゃない? ダメだと思ったら離婚して家に戻ったって良いんだもの。あなたは特許でこれから先もお金には苦労しないでしょうし、人生ぐらい好きにしなさいよ」
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