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素性を知りたい、文通をしたい
いつもよりも長く感じる時間を過ごして、また新月の日が来た。
あたしはずっとずっとアルに聞きたいことを頭の中に思い浮かべて、今日こそはちゃんと問いただしてスッキリするつもりでいる。
でも、尋ねたことを有耶無耶にされても、結局あたしアルのこと好きだなって流されてしまいそう。
いつの間にこんなにだらしのない子になってしまったんだろうと気が滅入った。
アルが結婚詐欺だったら、あたし簡単に騙されるわ。
「太陽神様、月の隠れた夜です——」
あたしは、自分の部屋で月の女神様に祈る前に太陽神様に祈った。
やっぱり、この間と同じようにキラキラとした神秘的な光が降り注いで、アルがそこに立っている。
実はずっと会いたかった。久しぶりのアルを目に入れると、胸の音がドキドキと大きくなってしまう。
「こんばんは、ウィルダ。祈りを捧げてくれてありがとう」
アルはそう言って、やっぱりいつもの素敵な笑顔を浮かべた。
聞きたいことが沢山あるのに、ああもうダメかもしれない。
「あの、アル……。あなたと離れている間、色々と考えてみたんだけど……」
「うん、私たちの婚姻のこと?」
「そ、そうよ。あたし、あなたのこと、何も知らないって思ったの」
「何も知らない、か。何が聞きたい?」
アルが一瞬冷たい口調になった気がしたけど、ここで遠慮をしていたらあたしの気が収まらない。
「アルは……貴族なんでしょう? あたしは、第何夫人に迎え入れられるの?」
「ああ、そういうことか。第何夫人か。まあそうだな、普通はそう思うものか」
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