素性を知りたい、文通をしたい

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「あたしも、あなたに恋を……」 あたしたち、似た者同士なのかしら。 お互いのことをよく知りもせず、なんだかよく分からないうちに恋に落ちている。 あたしたちは夢中になって唇で相手と繋がっていくようなキスをした。 こんな、真夜中の暗い新月の夜、ここは、あたしの部屋。 「アル……ちょっと待って……」 このままの流れはいけない、と気付く。 あたしたち、無意識にお互いを求めている。 気をしっかりと持たないと、深い沼に足を取られて溺れそうだって、分かる。 「何を、待てばいい……?」 アルの色っぽい顔。濡れた声。少し荒い息が耳を掠めた。 今日は新月の日だから、女神様に祈りを捧げるのは必須ではない。 この間の満月の日みたいにタイムリミットがあるわけじゃないし、明日は都合よく仕事も休みだ。 だからあたし、このままだとまずい。多分、本当に。 「あなたと婚約するのは、嫌じゃないの。でも、本当は……もっとゆっくり時間を掛けて、お互いのことをよく知るべきだと思う」 「初めて会った日から、もう一ヶ月なのに?」 アルの湿った声で、身体が震える。 確かにあたしたち、出会ってから時間が経っているかもしれないけど……過ごした時間は一時間にも満たないわ。 「もっとアルと会話をして、お互いのことをよく知って、それからでなきゃ、あたし……」 「出来ない?」 「え、ええ……」 出来ない?! って?  そういうこと??  や、やっぱり、アルの方はそのつもりだったのかしら……。 よく分からないけど貴族の人たちって、結婚してから男女の関係になるものだって聞いたことがあるのに……。 「じゃあ、次の新月までお預けか……」
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