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アルはそう言ってつまらなそうな顔をした。
確かに、あたしたちがそういう行為に及ぶのなら、新月くらいしか考えられないけど、でも……。
「ちょっと待って! もう、次の新月って決まってるの?」
猶予が1ヶ月延びただけじゃないの。
その間、次の満月の日に少し会話をするだけだったら、今と大して変わらないわ。
というか、かえって時間を引き延ばされた分だけ、ずっとドキドキしながら過ごさなきゃならなくなる。
「今すぐ夫婦になったって、私は構わない。いやむしろ、今すぐ夫婦になるべきだ」
「どうしてよ!?」
「ウィルダを、離したくない」
ぃやめて——————!!
アル、あたし、心臓が持たないわ!!
「あ、あたし、どこにも行かないわ。あなたのことしか好きじゃないもの」
「でも、ここで夫婦の誓いは出来ない?」
「なんでそんなに急ぐの?」
あたしの問いに、アルはちょっぴり項垂れた。
「次の新月が、ギリギリなんだ。成人前の」
「あら、まだ成人前? 17歳なのね?」
「成人になったらとある責任が課せられて……遠くに行かなきゃならない」
「その時、あたしは……?」
「既に奥さんだったら、無条件で連れて行ける。でも、恋人はダメなんだ」
なるほど、と思う。
アルはアルで、これから貴族様特有の責任が待っているらしい。
その前に結婚して、夫婦で任務に向かいたいってことかしら?
「でも、アル……。あたし、親の同意をもらわなくちゃ」
「実は、絶対反対されると思うから、本当は君と私の二人だけで夫婦の誓いを済ませたい」
「絶対に反対される……?」
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