素性を知りたい、文通をしたい

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あたしは、もしかするととんでもない人を好きになってしまったんじゃないかしら。 アルの話を聞く限り、アルは何か使命のようなものがあるらしい。それに、太陽神様の加護まで付いている。 月の女神様は狩猟の神様だけど、確か太陽神様は戦いの神様だもの。 きっと、この人、戦いの宿命が付いているわ。 その結論に至るまで、あたしは何度もアルと唇を重ねた。 アルが物足りなさそうにあたしを求めているのが分かると、この人の宿命も、使命も、きっと全部を受け入れるのがあたしの運命なんだって思う。 あたしたちは夜更かしをして、夜に舞う精霊たちを一緒に眺めた。 ソファでアルに包まれるように座って、新月の中で光る幻想的な姿を見て話をする。 夜になると、アルよりもあたしの方が精霊を見る力は強くなるみたいだった。でも、あたしは昼間には精霊が見られないから、アルの方があたしより加護が強いのかしら。 白い菫の妖精があたしのところに来て、「あなたの恋人?」とからかってきた。あたしが「そうよ?」と答えたら、菫の妖精は「お似合い」と笑ってくれる。 アルが「何の精霊が居たの? 何だって?」と聞いてきたから、白い菫の妖精があたしたちをお似合いだって言ってくれたのと伝えたら、「純粋な恋の妖精がそんなことを言ってくれた?」と抱きしめられた。 あたしはその場で失神するかというくらい動揺して、折角アルと過ごす貴重な時間だから、なんとか踏みとどまって意識を保つ。
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