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アルの目は、深い海の底のようだと思ったけど、深くてもとても温かいのだと知った。
あたし達は次の満月の日の約束をしながら、相手の気持ちが自分にあることを確認する。
なんでアルがあたしのことをこんなに好きなのかは分からなかったけど、実際あたしもなんでこんなにアルに惹かれているのか分からない。
よく分からないことを考えても仕方がないから、今は幸せな夜を噛み締めるだけにしておこうって決めた。
徐々に太陽の光があたしの部屋を明るくし始めると、あっという間に新月の夜が終わって国民の休日が始まる。
「帰らなくてはな」
残念そうに言うアルの顔を見たら、自分が抑えきれなくなってキスをした。
昨日の夜から、もう何回になるか分からない。
「次は、満月ね。その前に、文通」
「次の新月が待ちきれない」
アルがそう言ってあたしを抱きしめるから、あたしの中の覚悟とか羞恥とかそういうものが、どうでもいいことみたいに思えて来る。
「次の新月には、もう、あたしたち夫婦になってる?」
「なってないと、困る」
アルはそう言ってあたしの唇を最後に奪うと、またこの場から消えてしまった。
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