アルの使い

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飛び立っていく鳥の姿を眺めて、あの手紙をアルが受け取るのはいつ頃かしら、と思う。 アルは、この町とは離れたところにいる、って手紙に書いていた。 この町は王都の近く。辺境伯のご子息とかなのかもしれない。だけど跡取りじゃないから何人も奥さんが要るわけじゃなくて……。 それにしたって、位が高いわ。 辺境伯だったら、マティアスのお父様よりも爵位が上だもの。 やっぱり、あたしにまだ話せない程度には高貴な人なのかもしれない。 あたしの家みたいな、平民なのにお金があって生活の質が高い家のケースは、貴族の人たちから差別的な目を向けられることが多い。 成金だなんだと言われて、学や礼儀を知らない平民が貴族のまねごとをしている、と揶揄される。 そういう風にあたしを見なかった貴族はマティアスだけだったけど、アルはあたしの全部を肯定してくれる気がする。 あの人は、本当にあたしのことが好きらしい。 アルの手紙を持ったままベッドに潜り込んで、「どうしよう」って叫んでしまった。 好きな人に愛されるって、こんなにドキドキするんだわ。
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