心の準備

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「相手の人はね、誰にも了承を取らずに、神様にだけ誓って既成事実を作ってしまおうって言ってるの」 「きゃー!! ロマンチックじゃないの!!」 メリーったらすごく興奮してる。この話って、ロマンチックなのかしら? 「良いわね! あなたの相手だったらその位の人がピッタリだわ!」 「……良いと思う? なんだか、悪いことをする気分で」 「良いじゃない。自分の人生よ? 一緒に暮らして一緒に生きる人くらい、平民特権で選びたいもの」 あっけらかんとしたメリーの言葉に、あたしの目から鱗が落ちた。 平民特権、か。確かに、好きな人と結婚できるのは平民の特権かもしれないけど。 「その……メリーって、旦那さんとは結婚前から……婚前交渉みたいなことはあったの?」 「ああ、普通にあったけど」 「……そっか」 あたしが学生と研究員の二足の草鞋を履いていた間、メリーは今の旦那様と既にそういう関係だったのだと知った。 やっぱり、平民同士ってこんなものなのかしら。 「ってことは、ウィルダはその方とはまだ……?」 「結婚の誓いの後、相手は一応その予定みたいで」 「へえ、真面目ね」 真面目かしら? それが普通だと思っていたけど。 メリーは男性陣の憧れだったのに、なんだか貞操観念が思った以上だったわよ、と言いたかったけどやめた。 「親にも黙って、そんなの良いのかなって悩んでたところ」 「自分が後悔しないって自信を持って言えるなら、良いのよ。でも、自分が後悔するかもって思うなら、絶対に止めてね」 メリーがそう言って、ソファで隣に座っているあたしの手を握って来た。 透き通った大きなグリーンの目が輝くのを見て、やっぱりメリーは他人を魅了する素質があるわねって納得する。
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