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新月の夜 夫婦の誓い
とうとう、この日が来てしまった。アルと約束をした、新月の日。
あたしは祈りを捧げるからと家族や使用人に断って、いつもより早めに部屋に籠る。
メリーにアドバイスをされて新調した、薄布の寝衣に着替えようとドレスを脱いだ。
部屋で露わになる自分の身体を見つめる。
大して、スタイルが良いとは言えない自分の見た目。
男の人は、好きな人の身体にがっかりしたりしないのかしら。
メリーみたいに見目よい女性に生まれたかったけど、お父様似のあたしは髪の色以外は大体お父様の要素でできている。
レースとチュールの使われたネグリジェに袖を通す。
部屋は真っ暗だけど、あたしの周りで光る精霊たちのお陰で鏡に映る自分の姿が分かる。
人生で初めて着た、ほんのり肌の色が透ける寝衣。
鏡の中の自分を見て、まるでどこかのお姫様みたいだわと驚いた。
さっきまで自分のスタイルに落ち込んでいたけれど、そんなことが気にならない。
女らしく人を飾る服に感動した。
「すごいわ……5割増し……それ以上ね」
鏡の中の自分に、急に自信が湧いてきた。
戦闘服って言うのかしら、着るものでこんなに気持ちが変わるんだから、身につけるものって侮れない。
アルに、どう思われるんだろう。
こんな格好であなたを待つのは、おかしいと思う?
気合が入りすぎているって引かれたりしないか、買う前にすごく悩んだの。
あたしはまだアルを呼んでいないのに、既に苦しい。
ドキドキが、身体を壊してしまいそう。
これからアルを呼ばなきゃって、祈りのために手を組んだけど……太陽神様を呼ぶ声が掠れる。
「たいよ……神……さま……」
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