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「おかしくなんかない。それも含めて、全てのウィルダを愛したい」
アルはそう言って長いキスをした。
これまでアルはあたしの頬と口にしかキスをしなかったけど、唇が口から外れて輪郭をなぞる。
アルがあたしを探っているのが分かったから、あたしはアルの名前を呼んだ。
暗い新月の夜。お互いの息が絡む。あたしたちは、二人だけで夫婦になった。
*
夜が徐々に明けて行く。部屋に差し込む光に、太陽が昇り始めているのだと分かった。
もう自分のことが分からなくなりそうなくらい、感覚がぐちゃぐちゃになっていた。
アルはなかなかあたしから離れない。今もアルはあたしを抱きしめて、あたしの背中をさすっている。
「そろそろ、朝が来るわ……」
身体を起こして、ベッド脇に散乱する服と露わになっている自分の肌に、突然羞恥心が襲った。
アルもあたしも、朝が来たら離れ離れになるのだろうと思ったから、結局一睡もしていない。
「妻を残して、また私は消えなければいけないのか」
ボソリと呟いたアルに、これからのことを聞かなきゃって気付く。
「数日以内に、迎えに来る。ウィルダを驚かせてしまうことが起きるけど、私を信じて待っていて欲しい」
アルは、心の声を聞いたみたいにそう言って、あたしの髪に触れた。
恐らくこの先、何か予想外のことが起きるんだって分かる。
でも、あたしたちは神様の認めた夫婦になった。だから、例え他の誰があたしたちを否定したって、もうこの関係は覆せない。
「あなたは、無茶をしたりしないでね」
「適度にやるよ」
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