新月の夜 夫婦の誓い

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アルはテキパキと着替え始めて、この部屋に着いた時の軍服に身を包んだ。 あたしたち、折角誓い合ったのに、またお別れなのね。 アルの軍服についた紋章に、見覚えがある気がして引っかかった。あれは、何だったかしら。 「じゃあ、数日後に」 アルはそう言って、完璧な軍服姿であたしにキスをして、また消えてしまった。 あの人があたしの夫なんだと思ったら、あまりに現実離れしている気がする。 でも、頭の中はこの数時間に起きたことでいっぱいいっぱいで、難しい事なんか何にも考えられなくなっていた。  * そのまま、ずっと部屋に籠っている。 使用人には体調がすぐれないと嘘を付いて、ベッドにずっと身体を埋めていた。 ここに、少し前までアルといたんだって思う度に、断片的な記憶が身体を走って動けない。 あっという間に夕方になって、一日が終わって行った。 こんな何もしない日って、久しぶり。 お父様もお母様も、ここ数日は新商品の発売で忙しかったんだから、とあたしを気遣ってくれた。 まさか娘が勝手に男性と夫婦の誓いをして、契りまで交わしていたなんて知ったらどう思うのかしら。 すごく悪い子になった気分。 あたしは、次に起きる自分の運命の事なんかさっぱり忘れ、アルの余韻に浸っていた。
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