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点と線
次の日、あたしは仕事に行く前に朝食を食べながら朝刊を眺めていた。国民の休日に我が国の第五王子が成人して、世間にお披露目を終えたという記事が一面に載っている。
何気なく記事を見て、そこに描かれた肖像にあたしは息を呑む。
アルバート王子殿下、18歳。
それは、一日前、あたしが夫婦の誓いをしたアルの姿かたちと全く同じ。濃紺の珍しい髪、あの軍服を身に着けて……。そう、あの紋章、見たことがあるはずだ。……王家の証。
あたしの頭の中は、真っ白になった。
どこかの貴族だとは思っていた。高貴な雰囲気がした。でも、まさか……。
まずい、と一瞬で分かる。
王子殿下なんて、外国の王家と結婚するような人たちだ。平民が手を出して良い相手じゃない。
王家は、昔から強い加護を持つ血筋だと言われている。だから、アルが太陽神様の加護を持っていたと思ったら……いろいろなことが繋がって行く。
よりによってあたしたち、お互いだけを夫婦とする誓いを立ててしまった……神様に。
急に吐き気が襲って、あたしは逃げ込むようにバスルームに駆け込んだ。昨日は殆どなにも食べていなかったから、吐けるものなんてほとんどなかったけど。
アルが、この国の王子様……? どうして、あたしと夫婦の誓いなんて立てたの?
あんなに大好きだと思ったアルが、急にあたしを裏切った人のように思えて来る。
あなたが王子様だとしたら、遊ばれて棄てられる方がよっぽど納得がいく。どうして、誓いなんか……。
この先、何が待っているのかと思ったら、恐ろしくなった。
あたしが第五王子と結婚なんかできるわけがない。
でも、神様に誓ってしまったということは? クリオス社はどうなるの? お父様とお母様は無事でいられる?
「あたしだけで、家を出た方が……」
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