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「ねえ、このお城で、尊い人を閉じ込めるとしたらどこ?」
「……別棟の最上階が、一番それに近い場所です」
「ありがと。案外物分かりが良いわね」
そこにアルがいるか分からないけど、目的がない以上、そこを目指してみようと思った。
多分この衛兵、途中で仲間に助けを求めるはずだから、その目的地に向かうまでにあたしはこの精霊銃を思い切り使うことになる。
心の中で女神様に祈った。
この先は狩猟を司る女神様の加護で、あたし、あらゆるものを狩ってやるわ。
アルはあたしとあなたが運命だって言った。それって多分、こういうこと。
なるべく、人を傷つけないで行きたいけど、手加減なんかしている余裕があるとは思えない。
捕虜を掴んで、道案内させながら歩いた。
「敵だ!」
おじさんが大声で叫ぶものだから、衛兵たちがこっちを見て剣や精霊銃を構える。
「やめてよね」
あたしはおじさんに恨み節を言うと、精霊銃に風の精霊の力を宿して周囲に放つ。
捕虜にしていたおじさんが勢いよく地面に倒れ、それ以外の衛兵の人たちも風に飛ばされないようにその場で動けなくなっている。
その隙にあたしは風の脇を走り抜けた。
後ろを振り返ると、あたしを追いかけようとする衛兵が吹き飛ばされそうになっているのが見える。
別棟に行けるらしい廊下を走って直進した。
途中、何人かの役人っぽい人や使用人とすれ違ったけど、あたしのことが分からない人たちは怪訝な顔だけを向けて来ただけだった。
「ここか……」
後ろに衛兵が追って来ていないのがかえって気持ち悪いけど、別棟に到着したあたしは階段をひたすら上る。ぐるぐると螺旋階段を上っていたら、目が回りそうだ。
誰にもすれ違わないのが、かえって不気味。ここは、一体何?
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