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罠かもしれない。こんな別棟の最上階、追い込まれたら上から飛び降りる位しか……。
気付いていたけど、後に引けない。お城に来てしまった以上、どこに行っても絶体絶命なんだから。
最後まで階段を上り切った時、目の中に飛び込んできたのは……あの、グレーの髪の人。アルの従者だった人だ。
「あなた……」
あたしは茫然として、アルが居ないショックもあったけど、あなたの王子はどうしたのって聞かなきゃと、階段を上り切った息を整えて話を始めようとする。
「花嫁様……」
グレーの人はそう呟くと、あたしの前で跪いた。
「アルは……どこ? どうして、あたしが、捕まったの?」
息を整えながらアルの従者らしきグレーの髪の男性に尋ねる。
「アルバート殿下は、遠方に搬送されました。私は、殿下の暴挙を見て見ぬふりをした罪で、ここに軟禁されています」
「ああ、なるほどね」
暴挙、か。一連のことは、アルが暴走した結果ってわけね。
グレーの彼は跪いていた姿勢から立ち上がった。狭い空間で比較的近くにいるからか、結構背が高いのねって気付く。
「でもあたし、アルに数日後迎えに行くって言われたんだけど」
「この状況で、それがまだ有効だと思われますか?」
「だって、呼んだら突然現れたりしたじゃないの」
なんかこの人、言い方に棘があるわよ……。ちょっとあたしの苦手なタイプかも。
「アルバート王子の加護の力が強かったからです。太陽神の加護は、他神の力を利用して様々なことができる。貴女の月の女神とも相性が良かった。ですが、今、殿下はその力を封じ込められています」
「封じ込める? そんなことが可能なの?」
「基本的に、あの方の半生は封印の中ですよ」
初めて聞く、アルの話。半生は、封印の中?
「ああもう、そういう話とか、色々聞きたいことだらけだわ。でも今あたし、絶体絶命なわけよ」
「助けが必要ですか?」
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