点と線

6/9
前へ
/144ページ
次へ
罠かもしれない。こんな別棟の最上階、追い込まれたら上から飛び降りる位しか……。 気付いていたけど、後に引けない。お城に来てしまった以上、どこに行っても絶体絶命なんだから。 最後まで階段を上り切った時、目の中に飛び込んできたのは……あの、グレーの髪の人。アルの従者だった人だ。 「あなた……」 あたしは茫然として、アルが居ないショックもあったけど、あなたの王子はどうしたのって聞かなきゃと、階段を上り切った息を整えて話を始めようとする。 「花嫁様……」 グレーの人はそう呟くと、あたしの前で跪いた。 「アルは……どこ? どうして、あたしが、捕まったの?」 息を整えながらアルの従者らしきグレーの髪の男性に尋ねる。 「アルバート殿下は、遠方に搬送されました。私は、殿下の暴挙を見て見ぬふりをした罪で、ここに軟禁されています」 「ああ、なるほどね」 暴挙、か。一連のことは、アルが暴走した結果ってわけね。 グレーの彼は跪いていた姿勢から立ち上がった。狭い空間で比較的近くにいるからか、結構背が高いのねって気付く。 「でもあたし、アルに数日後迎えに行くって言われたんだけど」 「この状況で、それがまだ有効だと思われますか?」 「だって、呼んだら突然現れたりしたじゃないの」 なんかこの人、言い方に棘があるわよ……。ちょっとあたしの苦手なタイプかも。 「アルバート王子の加護の力が強かったからです。太陽神の加護は、他神の力を利用して様々なことができる。貴女の月の女神とも相性が良かった。ですが、今、殿下はその力を封じ込められています」 「封じ込める? そんなことが可能なの?」 「基本的に、あの方の半生は封印の中ですよ」 初めて聞く、アルの話。半生は、封印の中? 「ああもう、そういう話とか、色々聞きたいことだらけだわ。でも今あたし、絶体絶命なわけよ」 「助けが必要ですか?」
/144ページ

最初のコメントを投稿しよう!

147人が本棚に入れています
本棚に追加