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「必要ないと思う? ここにも追手が来るかも」
「恐らくここには来ないでしょう。衛兵は、私なら花嫁様を捕まえるだろうと思っているはずです。さて、貴女には王家の事情に通じるものが居た方が良さそうですね?」
「それ以外にも、色々よ」
あたしはそう言うとグレーの髪の彼に右手を差し出す。彼はその手を握ると、
「ノーヴァです」
と名前を教えてくれた。あたしのことは知ってそうだし、花嫁様って言ってたから……とりあえずいいかしら。
左手は、この間アルに差し出したから、あえて右手にしておいた。ジンクスみたいなもの。
「ノーヴァ、まず教えて。このお城から出て、アルを目指すの」
「すいません、私にも正確な場所は分からないんです」
「……あなた、加護は?」
「あります。何しろ、あの殿下のお目付け役ですから」
「頼もしいわ。じゃあ、強行突破かしらね」
あたしがノーヴァにそういうと、彼はいい方法がありますよ、と私に耳打ちしてくれた。
誰もいない部屋なのに耳打ちなんて、変な趣味、と思ったら、ノーヴァは耳から術をかけてあたしの姿を衛兵に変えた。
「なにこれ……変身した?」
「先程あなたが記憶した衛兵を再現しました。私を誘導している雰囲気で、一緒に普通に歩いて行きましょう」
「あ、頭いいわねえ……」
あたしだったら、こういう術の使い方は思いつかないかも。ノーヴァって、結構キレ者かしら?
「あたし、周りに加護を持っている人なんか居ないから聞きたいんだけど……、王家ってみんなやっぱり加護持ち?」
「基本的には、そうですね。全員ではないですが」
「そうすると、加護の力の使い方とか、そういうことを学ぶわけ?」
「はい。勿論です」
あたしはノーヴァを連れて城内を歩いた。
誰にも不審がられずに、当たり前のように歩いていられる。
「あたし、アルと、その……夫婦の誓い……をしてから加護が強くなったみたいなんだけど」
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