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月の加護を受けて光る灯り、精霊の力で撃つライフル。実際は加護を活かしてどうやったら精霊の力を宿せるかというところだけを考えているんだけど、国内でそんなことができるのはあたしだけだから、この能力は割と重宝されている。
この国では、女性が積極的に仕事をするっていうのはあんまり普通の事ではない。だから、マティアスなんかはとても心配してくれる。それが、嫁の貰い手がなくなるからなのか、単にあたしが仕事に熱中しすぎてしまうからなのかは、分からないんだけど。
「女神様、今夜も、月が隠れました……」
あたしはまっ暗な部屋で窓際に立ち、月明かりのない外に向かって手を組む。祈りを捧げ始めると、次々に色んな精霊が集まって来た。
「みんな、今宵の調子はいかが?」
小さな光を発しながら飛び回る精霊は、人の形をしていたり、動物のような形をしていたり、形は様々で個体差がある。暗い新月の部屋に精霊の発する光が灯って、この日の夜はとっても綺麗。
あたしのことを興味深げに見て、猫と狐の間みたいな動物の形をした精霊が「チイ」と鳴いた。鳴き声は鳥みたい。
「あなたと、今日……どこかで会ったかしら?」
猫みたいで狐みたいな耳に目がくりくりとした精霊を、あたしはじっと眺める。
「ああ、パン屋さんにいたのね。黒パンの……ライ麦の精霊?」
あたしが尋ねると、その子はまた「チイ」と鳴いた。当たりみたいね。
この子、暫く私の側にいるつもりみたいだわ。
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