新月の夜

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あたしが初めて発明をしてから、5年。もうあたしは18歳。初めて「月の(ライト)」を発明した13歳の時、すでに一番上のお兄様がお父様と一緒に仕事をしていた。 あたしはそれが羨ましくて、月の加護を利用した発明品の構想を紙に書いてお兄様に見せた。お兄様はそれが気に行ったらしく、会社の研究員に見せて試作品を作ってしまった。 その後、改良に改良を重ねて商品化されると、クリオス社はその売上で一気に成長して大企業になった。世界中に、蝋燭以外の明かりが灯っているのは全てうちの会社のお陰。 あたしは、今も研究員として働いている。同級生たちは、婚約したり結婚したりして……次々に「家庭」に入って行く。 それが当たり前だと教えられて来たけど、あたしにはその感覚が分からない。好きな人と一緒になれること自体は、素敵だとは思うけど。 幼馴染のマティアスには、色んな所から縁談の話が来ているらしい。 あんな風にあたしのことを気にかけてくれていても、結局彼は貴族様。きっと貴族のご令嬢3人くらいと結婚をする。だって、あの人には世継ぎが要る。沢山の子どもを残さなきゃいけない。 何人も奥さんがいるような人になるのか、と思ったら、急に嫌悪感が襲ってくる。そんな人のことを、ちょっとでも好きかもって思っていた過去の自分が情けない。彼があたしのことを例え好きになってくれたとしても、立場上、平民の奥さんなんか作らない。せいぜいあたしに担えるのは妾くらいなもので、そんな地位にはまるためにマティアスを好きになるなんて、自分が許せない。 だから、あたし……もう、恋はしないって決めたの。
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