雨の家

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雨の家

いとしい家族を火災でいちどにうしなった建築家は、それいらい窓のない家ばかり建てるようになった。建築家がすがたを消したあとまもなく、くさむらに残された家の、ないはずの窓から顔を出す子どもを見た者が現れた。子どもは、あるときは歌い、あるときは助けを求め泣き叫んでいたが、ふたたび目をやると窓ごと消えていた。その家は、壁に耳を当てるとピチャピチャと水の滴る音が聞こえるといい、〈雨の家〉とよばれていた。不審火により焼失していまは空き地になっている。
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