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母の話②
戦前から戦中にかけて、母の一家は台湾にいた。祖父が製糖会社に勤める技師で、仕事の都合で、一家で日本から移り住んだ。
母の出生地は台北とあるが、実際住んでいたのは台湾の南の蒜頭という町で、母はサンタオと呼んでいた。
この町のことを調べても中々出てこないと思ったら、どうやら製糖鉄道の駅で、現在は廃線で観光用のトロッコがあるのみらしい。
戦争が終わると、中国の本土の軍隊が入って来た。近所の人に上げる約束をしていたミシンを、強引に持っていかれてしまったという。
当時、祖母は大病で左半身不随となっており、日本に帰るのを嫌がった。
台湾の人たちも、祖母のことは面倒を看る、と申し出てくれた。かと言って、この状況下で、祖母を置いていくわけにもいかず、一緒に帰ることになった。
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