ある夏、18:05

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 ぽん、と肩に何かが触れた。振り返ればそこにいたのは折り畳み傘を持って首を傾げている男の人。見覚えのない風貌に、目を瞬いて尋ね返す。 「はい?」 「……あの、傘、使いますか」 「え?」  私に話しかけてる、ん、だよね?  そう不安になるくらい目の前の男の人はイケメンだったし、差し出されたエメラルドグリーンの傘は居心地が悪そうだった。けれども、ゆるくパーマのかかった髪から覗くぱっちり二重の瞳は、間違いなく私を映している。 「で、でも、あなたは?」 「俺、濡れても大丈夫なんで」  あなた他の傘持ってないんかーい! 「いや、私大丈夫なのであなたが使ってください」 「でも、俺は、荷物もってないから」  断っても、目の前のイケメンは引いてくれない。  これで私が超絶美少女とかなら話が続いていくのかもしれない。だがしかし、私は理系女子あるあるを詰め込んだみたいな女だ。2次元から飛び出してきたみたいな男の人に話しかけられるような人間ではない。 「いや、あの、ほんと大丈夫なので、」 「大丈夫じゃないです。はい、どうぞ」  無理矢理にでも私に傘を持たせようとしてくるイケメン様に、妥協案として提示できる案なんて、ひとつしかなくて。 「じゃあ、あの、一緒に、」  烏滸がましすぎて尻すぼみになっていく私の言葉に、どうしてか目の前のイケメンは、パァっと顔を輝かせた。
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