ある夏、18:05

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 世間様の目が痛い。ああ、地面になりたい。 「……聴いてる?」 「あっはい、聴いてます、」  聴いてない、もとい、聴けない。顔だけじゃなくて声までイケメンとかなんなん。心地よすぎて気を抜くと何言ってるか分かんなくなる。  慌てて返事をすれば、傘を持ってくれているイケメン――……翡翠(ひすい)くんは、ははっと笑う。 「紗希(さき)ちゃん、敬語じゃなくていいってさっき言ったじゃん」 「あ、えと、うん、」  駅から歩きながら互いに自己紹介をしたら、同い年だということが判明した。同じ年に生まれたのにこんなに違うなんて神様は意地悪だ。 「あとさ、実は同じ大学なんだけど、」 「え!」  驚いた。うちの大学にこんなイケメンがいたなんて。 「知らないよね」  はは、としょんぼりしながら笑う彼に、すこしだけ罪悪感がこみあげる。
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