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そう答えようとした時、翡翠くんの足が私の家の方向から右に逸れる。ぶれた傘からパタッと雫が落ちてきて、「ひゃ」と声を上げてしまった。
「あ、ごめん、いつものくせで曲がろうとしちゃった」
「翡翠くん家こっちなの?」
「うん、あれ」
20mほど先に見えるのは、お洒落なアパートだった。学生寮のうちとは全然違う。
「えっ、じゃあここまででいいよ」
「えーいいよ、最後まで送る」
「ほんとに、大丈夫だから」
「……じゃあさ、この傘貸すから、もってって?」
そう言って押し付けられた傘、ハッとした時にはもう翡翠くんは駆けだしていた。
「紗希ちゃん、またねー!」
雨の中、手を振って走っていく翡翠くんの後ろ姿は、やっぱり死ぬほどイケメンだった。
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